九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

奄美、熊毛地域における木柱利用の簡易平張施設内の環境特性

要約

奄美、熊毛地域における簡易平張施設内の平均気温は露地と同程度かやや高く、盛夏期の最高気温は35~40°Cに達する。また、減風率は21~59%で、減風効果は高い。一方、積算日射量は露地に比べ14~30%低く、湿度はやや高い。 

  • キーワード: 奄美、熊毛、簡易平張施設、気温、減風、積算日射量、湿度
  • 担当: 鹿児島農総セ・徳之島支場・園芸土壌研究室、熊毛支場・園芸研究室
  • 代表連絡先: Tel:0997-86-2004(徳之島支場)、Tel:0997-22-0007(熊毛支場)
  • 区分: 九州沖縄農業・野菜・花き
  • 分類: 技術・参考 

背景・ねらい

奄美、熊毛地域は台風や季節風、降霜の被害を受けやすく、冬春期および夏期の野菜の生産が不安定である。近年、花き栽培で平張施設が導入され、気象災害軽減に効果が認められている。しかし、コストが高いため、低コストで簡易な施設利用による気象災害回避策が望まれている。そこで、木柱を使用した簡易平張施設の奄美、熊毛地域における環境特性を明らかにする。 

成果の内容・特徴

  • 奄美地域における木柱を利用した簡易平張施設内(以後、施設内と表記)の温度環境は、冬春期では露地に比べて日平均気温で0.2~0.5°C、日平均地温で0.4~0.5°C高く推移する。夏期の施設内温度は気温で0.3~0.8°C、地温で0.3~1.1°C高くなり、最高気温は露地に比べ0.8~2.2°C高く、35~40°Cに達する(表1)。
  • 熊毛地域の施設内の温度環境は、最高気温、平均気温、最低気温とも露地と同程度であるが、春夏期には最高気温が露地より1°C程度高い日がある。一方、降霜時には最低気温が1°C程度高く、保温効果がわずかにある(表1、図1)。
  • 施設内の平均湿度は露地に比べてやや高い(表1)。
  • 台風接近時の最大瞬間風速は露地が16.6~21.6m/秒の場合、施設内では8.9~9.9m/秒にとどまり、減風効果が高い。また、平常時でも露地に比べて風が弱く、減風効果がある(表2)。
  • 施設内の積算日射量は、露地に比べて奄美地域では14~18%、熊毛地域では30%程度少ない(表3)。
  • 施設内の照度は露地に比べて10~15%低い(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 簡易平張施設とは、直径10~11cmの木柱を3m間隔に柱高2.2~2.5mで建て、全面を1.0mm目合いの防虫ネットで被覆した施設である。
  • 簡易平張施設の建設工事費込みの設置コストは、10a当たり130~150万円である(なお、鉄骨平張施設の設置コストは10a当たり500万円程度である)。
  • 簡易平張施設で栽培する品目を選定する際の資料として活用する。

具体的データ

 表1

図1

表2

表3 

その他

  • 研究課題名: 南西諸島における野菜花きの低コスト耐風施設の高度活用と生産安定技術確立
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2006~2008年度