要約
トマト低段密植栽培において、5月~8月定植の作型では30分間の積算日射量0.8MJ/m2を指標値として遮光資材を自動開閉することにより、常時遮光に比べ乾物重、1果重が増加する。また、定植期に関わらず、糖度、商品果収量が同等以上となる。
- キーワード:高温、トマト、低段密植栽培、積算日射量、遮光、自動開閉
- 担当:福岡農総試・野菜栽培部・野菜栽培チーム
- 代表連絡先: Tel:092-922-4364
- 区分:九州沖縄農業・野菜・花き
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
低段密植栽培(保水シート耕式)による高糖度トマトの周年生産では、高温期が生育や果実肥大には不良環境であるため、7~9月の晴天日には常時遮光が行われているが、過度の遮光により乾物生産量を減少させ減収を招くおそれがある。吉田ら(2002)はトマト苗において、日射量が400w/m2(30分間積算日射量0.72MJ/m2相当)を超える強光時に50%の遮光すると、乾物生産に悪影響を及ぼすことなく高温・強光ストレスを回避できるとしている。
そこで、高温・強光ストレスを軽減し、乾物生産量を低下させることなく、生育、収量および品質の安定を図るため、積算日射量に基づいた遮光カーテンの自動開閉制御方法を確立する。
成果の内容・特徴
- 屋外の30分間の積算日射量0.8MJ/m2を指標値として、内張り遮光資材(遮光率45%)の制御を行う(以下、自動遮光とする)ことにより、天候に応じた遮光ができる。この結果、5月~7月定植では栽培期間中の遮光時間が慣行(常時遮光)の70%、8月定植では47%となる(図1、一部データ略)。
- 自動遮光により盛夏期の9:00~16:00のハウス内の平均気温は遮光なし(39.3°C)に比べて1.0~2.2°C低下し、トマトの葉温は1.3~6.0°C下がる(データ略)。
- 自動遮光では不良果発生率が慣行に比べて低く、商品果収量が多い。また、トマト個葉の光合成速度、茎葉と果実の1株当たりの合計乾物重、平均1果重および糖度は自動遮光が慣行に比べて高い(表1)。
- 自動遮光により、定植期に関わらず慣行に比べて商品果収量および糖度は同等以上となる(図2、一部データ略)。
成果の活用面・留意点
- 低段密植栽培による高糖度トマト栽培における高温期の安定生産技術として活用できる。
- 積算日射量による遮光制御装置は現在市販されていないが、簡易に自作できる(日射計、グリーンキット(GK-80)、パソコン、リレー等で約40万円)。
具体的データ
その他
- 研究課題名:トマト低段密植栽培の高品質安定生産技術の確立
- 予算区分:県単
- 研究期間:2007~2008年度
- 研究担当者:井手治、龍勝利、國武みどり、小熊光輝、奥幸一郎