要約
開発した株元加温装置は、専用電熱線と保温シートを主枝株元に取り付け、経費は約76万円/10aを要する。促成ナスの株元加温を行うと、暖房温度を10°Cから8°Cに下げても同等の収量が得られ、燃料消費量が約55%削減されることで、所得が増加する。
- キーワード:促成ナス、株元加温、省エネ、電熱線
- 担当:福岡農総試・野菜栽培部・野菜栽培チーム、筑後分場・野菜チーム、((株)Zen)
- 代表連絡先: Tel:092-922-4364
- 区分:九州沖縄農業・野菜・花き
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
福岡県の促成ナス生産は、他産地との競争や高単価であった年内単価の低下等により、経営環境は厳しさを増している。さらに、原油価格の高騰に伴い暖房コストが著しく増加しており、省エネルギー技術の開発は緊急な課題である。このような状況の中、本県が(株)Zenと共同で考案した株元への局所加温法が、暖房温度低減と収量向上に有効であるとの知見を得た。
そこで、促成ナス生産の暖房コストを大幅に削減でき、かつ高収量を維持するため、電熱線を用いた実用的な株元加温装置の開発とその利用技術を確立する。
成果の内容・特徴
- 電熱線方式の株元加温装置は、ナス主枝の株元24cmに専用電熱線を沿わせて、保温シートで包み込み、結束用機材(テープナー)で取り付ける。設置には52秒/株で、10a当たり約12時間を要する(図1)。
- 株元加温は、茎表面の温度を20°Cに設定し、12月~4月まで行う。また、加温時間帯は、18時~24時が終日と同等の増収効果で、電力消費量は終日と比べて73%削減される(表2、一部データ略)。
- ハウス暖房温度が8°Cの条件下で株元加温を行うと、10°Cで暖房したハウスと比べ、収量が同等で、燃料消費量は約55%削減される(表2)。
- ハウス暖房温度を10°Cから8°Cに下げて、株元加温を行った場合の経営試算をすると、減価償却費が装置の導入により9.9万円増えるが、光熱費が約20万円減り、経営費が9.6万円減ることで所得が増加する(表1)。
- 10a当たりに必要な資材は、制御装置4台、専用電熱線8本、保温シート800枚、テープナ-1台で、経費は約76万円である(表3)。
成果の活用面・留意点
- 開発した電熱線方式の株元加温装置は、共同研究機関の(株)Zenが平成21年度内に販売を行う。
- 株元加温装置の利用マニュアルを作成し、指導機関および利用者に配布する。
- 経営試算は、制御装置、電熱線の耐用年数を8年、保温シートは4年、A重油価格を70円/L、電気料金を低圧季時別電力で行った。
具体的データ
その他
- 研究課題名:局部加温による冬春野菜の低コスト増収技術の開発
- 予算区分:県単
- 研究期間:2007~2008年度
- 研究担当者:奥幸一郎、森山友幸、小熊光輝、井手治、國武みどり、龍勝利
- 発表論文等:森山ら「長茎植物の栽培方法及び植物栽培装置」特願2006-87142、特開2007-259727