農研機構では災害対策基本法に基づき防災業務計画を作成しています。そのなかで、防災業務に関しては農村工学研究部門が中心的に担うと位置づけられています。これを踏まえ、本部門で、防災に関する試験及び研究並びに調査を行うとともに、災害対策への技術支援を実施しています。
災害時に技術支援を行っています
農地や農業施設に関わる自然災害が発生した場合は、防災業務計画に基づき、農林水産省農村振興局防災課を中心とした技術支援要請に応じて専門の職員を災害現場に派遣し、応急措置や災害復旧等について専門的な知見を活かして助言しています。
平成28年の4月に発生した熊本地震においては、農研機構他部門や九州沖縄農業研究センターと連携しつつ、農村工学部門として10次にわたり職員のべ20名(2016年8月末現在)を派遣し、ため池の被災、農地の亀裂や崩壊、ハウスの倒壊、農道の崩落、海岸堤防地内の液状化、甘藷貯蔵庫の被災などについて調査を行いました。そして現地の状況を踏まえつつ、電気探査によるため池堤体の亀裂範囲の推定技術の活用や、応急対策への助言などを行っています(PDF)。
また、激甚災害に指定された平成28年の台風7、9、10、11 号による被災に対しても、北海道農業研究センターとの連携・分担を取りつつ、北海道十勝地方にて緊急調査を行うとともに、北海道、芽室町、JA めむろ、水土里ネット北海道、北海道農業研究センターと農地等の復旧に向けた共同調査を実施しました。これら現地調査では、河川氾濫・土石流による用水・排水施設と農地の被災状況を確認し、その発生要因を解析するとともに、農地の喪失程度の把握、堆積物の分析、復旧工事のための土取り場調査などを行い、今後の対応方針の検討に対して支援を行っています。
その他東日本大震災以降に技術支援を行った災害(PDF)
農村防災に向けた技術開発を行っています
上記の技術支援は農業農村工学分野における研究開発の成果によって裏付けられてきました(PDF)。
そして、現在取り組んでいるのは、農村地域の強靭化に資する施設の保全管理及び防災・減災技術の開発です。保全管理では、基幹水利施設の劣化に伴う水理・送水機能の診断、劣化の進展モニタリング、農業水利施設の長寿命化、水路の漏水検出等の状態監視などの技術を開発します。また、防災・減災では、自然災害に対する農業水利施設のリアルタイム危険度を予測し、その結果を迅速に伝達する災害情報システムの開発などを行います。
災害対策調整室が設置されています
農村工学部門には災害対策調整室があり、「農地・農業用施設等の災害に関して、防災業務計画及び防災対策マニュアルの管理並びに緊急災害時の情報収集・分析、現地等との連絡調整、技術支援及び総合応急対策工法の分析・体系化等を行う」ための専任のスタッフが配置されています。
ここ最近では、東日本大震災等の大規模災害への対応に関するとりまとめを行いました。
・鈴木ほか(2016)東日本大震災から5年間の農研機構農村工学研究所の技術支援(PDF)
・鈴木ほか(2016)東日本大震災の教訓を踏まえた農工研の技術支援(PDF)