生物機能利用研究部門

遺伝子組換え農作物・食品ハンドブック

QIV- 1 遺伝子組換え生物の取り扱いに関する国際的な取り決めとして、「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」というものがあると聞きますが、それはどのようなものですか?

Answer1

カルタヘナ議定書は、生物多様性条約の下の議定書であり、現代のバイオテクノロジーにより改変された生物 Living Modifi ed Organisms(「LMO」と略します。)による生物多様性の保全および持続可能な利用への影響を防止するための国際的な枠組みを定めたものです。なお、『カルタヘナ』とは、この議定書が検討された生物多様性条約締約国特別会合の開催地であるコロンビアの都市の名前です。
✽ LMOには遺伝子組換え生物と分類学上の科を越えた細胞融合生物が含まれます。

Answer2

主な内容は次のとおりです。

  • 議定書の目的
  • 国境を越えて移動するLMOが、生物多様性の保全および持続可能な利用に悪影響を及ぼすことのないようにLMOの安全な移送、取扱いおよび利用において、十分な水準の保護を確保することを目的としています。

  • 議定書の適用範囲
  • 生物多様性に悪影響を及ぼす可能性のあるすべてのLMOの国境を越える移動、通過、取扱いおよび利用について適用されます(人用の医薬品は対象外。)

  • 輸出入に関する手続き
    • 環境への意図的な導入を目的とするLMO(栽培用種子など)の輸出入に際しては、事前の通告による同意(AIA)手続きが必要、としています。輸出国(または輸出者)は、LMOの意図的な国境を越える移動に先立ち、輸入国に対して通告を行い、輸入国は、その情報を踏まえ、リスク評価を実施し輸入の可否を決定することとしています。
    • 輸入締約国の基準に従って行われる拡散防止措置の下での利用を目的とするLMOの輸出入については、AIAの適用除外とされています。
    • 食料もしくは飼料として直接利用し又は加工することを目的とするLMO(コモディティ)の輸出入に関しては、AIA手続きを必要とされていませんが、コモディティとして輸出される可能性のあるLMOの環境放出(野外試験を除く)を決定した締約国(当該LMOの生産国であり輸出国となりうる締約国)は、バイオセーフティに関する情報交換センター(BCH)を通じてその決定を他の締約国に通報することとしています。また、輸入締約国は自国の国内規制の枠組みに従いコモディティの輸入について決定することができるとしています。
  • リスク評価、リスク管理の実施
  • 輸入締約国は、LMOの輸入の決定に際し、リスク評価が実施されることを確保するとともに、リスク評価によって特定されたリスクを規制し、管理し、制御するための制度等を定め、維持することとなっています。

  • 取扱い、輸送、包装および表示について
  • 取扱い、輸送、包装および表示について議定書の締約国は、LMOの安全な取扱い等を義務付けるために必要な措置をとること、また、LMOには、必要な情報を含んだ文書を添付することを義務付ける措置を講ずることとなっています。

(参考1)

カルタヘナ議定書の概要

(参考2)

事前の通告による同意(AIA)手続きの流れ