畜産研究部門

草地利用研究領域

放牧地で授乳中の親子放牧牛。母牛に子牛を育てさせることから、省力な子牛育成が可能です。

人は、草を食べてもうまく消化することが出来ませんが、草食動物である牛は、食べた草を胃中の微生物の力を借りて消化することが出来ます。草地を放牧利用する放牧飼養体系は、土-草-牛が一体となった資源循環型畜産といえます。さらに放牧には、省力・低コスト生産、飼料自給率向上、家畜の健康増進、家畜福祉、機能性成分に富む畜産物生産など、多くの利点があります。

近年、高齢化した零細な肉牛繁殖農家の廃業等に伴って子牛供給不足から、肥育素牛価格は急激に上昇しており、肉用子牛の安定供給が喫緊の課題となっています。一方で中山間地域では耕作放棄地が急増しており、農地集積が可能としても傾斜地を含む条件不利地の活用は極めて難しいといえます。これら両方の課題を同時に解決できるのが放牧活用型畜産と考えられます。そこで、集積された耕作放棄地等を草地化して肉用牛周年親子放牧を導入することで、初期投資が少なく規模拡大や新規就農が容易な省力かつ収益性の高い肉用牛繁殖経営を確立することを目指しています。これにより耕作放棄地の解消につなげるとともに、畜産現場を強化して肥育素牛の安定供給につなげていきます。

草地利用研究領域では、耕作放棄地等を地域飼料資源として草地活用できる周年親子放牧技術を開発しています。また環境変動による草地の生物多様性に及ぼす影響を評価し、温暖化緩和技術を開発しています。さらに草地における放射性セシウム対策技術を開発しています。これらの開発技術については、情報交換会、シンポジウム、研修会等の開催、マニュアルの作成といった形で情報発信と普及に努めていきます。


領域長

野中 和久(のなか かずひさ)

所属研究ユニット