農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第13号(2011年4月号)

東日本大震災で被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。

目次

1)トピックス

■東日本大震災への対応状況

震災直後の3月12日から4月15日まで、10次にわたり延べ34名の職員を被災現場に派遣しました。これまでの技術支援は、被災したダム、ため池、パイプライン等の二次被害の防止が目的でした。

被災地域では、復興ビジョンや復興計画の策定の検討に入りました。農工研では、技術的な側面からこのような取組をしっかりと支援できるように、生産基盤の整備と生活環境の整備という双方の視点から種々のアイデアを構想しています。これを農工研の技術支援のモデルや考え方として提言/提案していく予定です。

当所の具体的な活動については、ホームページやメルマガ臨時増刊号等で適宜お知らせ致します。

防災研究調整役 鈴木尚登

(関連URL)

■研究推進体制の再編 ‐4月から農工研が変わりました-

この4月より、第3期5年間の中期目標期間が始まりました。これに先立ち、農研機構理事長が、第3期中期計画を効率的に推進できるよう、研究推進体制の見直しを指示しました。このため、この4月から、全ての内部研究所・地域センターが研究領域制へと移行しました。

農工研では、これまで研究部・室体制を採用してきました。研究領域制に変わっても、研究の専門性と行政施策及び事業制度等との責任ある対応関係が外部から見て分かるように、専門担当制を導入して再編しました。何とぞご理解の程よろしくお願い申し上げます。

企画管理部長 小泉健

(関連資料)

(季節のフォト)

2)技術なんでも相談

■塩害を受けた農地の復旧方法について教えて下さい。

匿名希望

●お答えします。

農地基盤工学研究領域 水田高度利用担当
統括上席研究員 原口暢朗

農林水産省の発表(平成23年3月29日)によると、津波の被害を受けた農地面積は約2万4千haと推定されました。海水の主成分は塩化ナトリウム(化学式NaCl)です。塩素(Cl)は作物生育を阻害し、ナトリウム(Na)も営農上好ましくありません。Clは容易に洗い流せますが、Naは土に残りやすいのでやっかいです。

土壌の中の微細な粒子(コロイド)は、陽イオンを吸着する特性があり、その強さは、Ca>Naです。そのため、塩害を受けた水田に、炭酸カルシウムや石膏などのカルシウム資材を投入すると、土壌中のNaを々にCaに置き換えることができ、Naを効果的に洗い流せるようになります。詳細は説明資料をご覧下さい。

(関連資料等)

■ため池の亀裂に石灰水を注入する理由を教えて下さい。

匿名希望

●お答えします。

施設工学研究領域 土質担当統括上席研究員 堀俊和

ため池の堤体の亀裂に石灰水を注入すると、浸み込んだ場所が白く着色されます。亀裂は構造的に弱く、開削して取り除く必要があります。石灰の白い痕跡は、開削する範囲を判断する目印となるのです。

ただし、亀裂部は、時間が経過すると、土の変形によって徐々にふさがり、被災して弱くなった部分が分からなくなってしまいます。このため、亀裂を発見した場合には、いち早く貯水位を下げることと、石灰水を流し込むよう助言しています。

(関連資料)

3)水土里のささやき

■日本の農民参加型灌漑管理組織の仕組みを技術移転 ‐JICA‐

独立行政法人国際協力機構
筑波国際センター 研修業務課長 浅野哲 様

研修員受入の際の指導教材や海外での専門家の業務等に役立つように、有識者の協力を得て、このテキストを取りまとめました。

一般公開資料として、次のURLから提供しています。http://hdl.handle.net/10410/767

農村工学分野の方々も、メルマガ会員になっていると聞いています。国内外で広くご活用いただければ幸いです。また、内容にご意見等あれば、今後の改訂の際に検討いたしますので、ご指摘いただきたいと思います。

(関連URL)JICA筑波: http://www.jica.go.jp/tsukuba/index.html

    4)メッセージ

    ■新理事(所長)就任のご挨拶

    農研機構理事(専門研究担当)・農工研所長 高橋順二

    この度、小前隆美前理事・所長の後を受け、4月1日付けで就任致しました。先ず以て、この度の東日本大震災による多くの犠牲者に深い哀悼の意を表するとともに、被災し不自由な生活を余儀なくされている皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。

    我が国は、未曾有の災害の復旧と復興という、過去の経験が通用しないような大きな課題に直面しております。このような中にあって当所は、被災地の地域力が回復し、豊かな幸に恵まれた農業・農村が蘇り活力を取り戻すことができるように、また、災害に強いまちづくりが実現するように、当所の総力を挙げて取り組んで参り
    ます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

      5)最新の「農工研ニュース」より

      ■補修材料がはがれる? ‐コンクリート水路の劣化との関連‐

      農業用のコンクリート水路は、供用開始から数十年が経過すると、ひび割れしたり、表面がぼろぼろになっているものがあります。このような水路の機能を回復するため、補修工事が各地で実施されています。しかし、補修材料がはがれる現場が見られるので、その原因を解明する研究に取り組みました。

      各地の古いコンクリート水路から一部を切り出し、化学分析を行いました。その結果、水中に浸っている期間が長いコンクリート表面部分で、カルシウム(Ca)成分が失われていました。このように、Caが溶脱した部分は、補修材料が付着しにくく、また、凍結融解に弱いことが分かりました。すなわち、水路の補修に当たっては、Ca溶脱深さの確認と、この部分を十分取り除くことが重要です。

      施設工学研究領域施設機能 担当主任研究員 森充広

      (関連資料)

      6)農村工学研究所の動き

      ■平成22年度運営委員会の開催

      4月20日に、東京の法曹会館で運営委員会を開催しました。当日は、4名の評価委員のご臨席を賜り、農工研の平成22年度業務実績を評価いただきました。

      評価委員から、「東日本大震災には重点的な対応が必要」、「研究成果が得られたら、論文発表だけでなく社会貢献を心がけるべき」、「農業と農村が風土・文化を担っており、国土を保全している。
      これらの研究成果をアピールして欲しい」等のご意見を頂戴しました。
      これらを踏まえ、行政支援型の研究独法として、より一層社会に貢献できるよう業務運営に努めて参ります。今回、委員お二人が交代されました。前任の森田昌史様(日本水土総合研究所理事長)と土佐直樹様(現山陽新聞社取締役)には、多々ご指導賜りましたことを深謝申し上げます。引き続きご指導お願い申し上げます。

      企画管理部 業務推進室長 小川茂男

      (関連資料)会議の模様: http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm13_06-01.pdf

        【編集発行】

        〒305-8609 茨城県つくば市観音台2-1-6
        (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
        企画管理部 情報広報課 Tel:029-838-8169