農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第16号(2011年7月号)

東日本大震災の復旧・復興支援状況については、ホームページに開設した特設サイトでお知らせしています。

目次

1)トピックス

■"減災農地"の水理模型実験による効果

大津波が発生した場合には、海岸堤防だけで背後地の人命と資産を守ることには限界があります。津波が陸上に遡上した場合でも、それを減勢できれば被害の拡大を防ぐことができます。

遡上津波の被害を最小限にする一つの有力な方法は、遡上エリアにおいて土地利用割合の高い農地を防災面で活用することです。農工研ではこれを減災農地と定義しました。

農工研では水理模型実験と数値解析により、減災農地の効果を確認し、津波被災地における有効な復旧・復興方策として提案しています。今回は、予備実験の模様をご紹介します。

水利工学研究領域 沿岸域水理担当主任研究員 桐博英

(関連資料)

2)イベントのご案内

■農業農村工学会シンポジウムの開催 -東日本大震災関連-

8月9日に、宮城県仙台市において、「東日本大震災の津波による農地塩害と取組方向」と題する農業農村工学会主催のシンポジウムが開催されます。

当所は共催機関となり、農地基盤工学研究領域・水田高度利用担当の原口暢朗上席研究員が講師として参画します。詳細は以下のURLからお知らせしています。

企画管理部 業務推進室 企画チーム長 吉永育生

(関連URL)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm16_02-01.pdf

3)イベント報告

■シンポジウム『早期帰村』実現の課題 ‐福島県飯舘村に参加

東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故による土壌汚染を除去すべく、農工研の専門家もかかわり除染対策が始まりました。そんな中、「全村避難」を強いられている福島県飯舘村の菅野典雄村長、同村で民宿を営む畜産農家の佐野ハツノさん、東京大学の溝口勝教授(土壌学)をお迎えし、『早期帰村』のための課題を議論するシンポジウムが開催されました(主催:中山間地域フォーラム)。

独自のむらづくり「までいライフ」を実践してきた村だからこそ『帰村』への思いは強く、その思いに、われわれ専門家はどのように寄り添うことができるのか、多くを考え、学んだシンポジウムとなりました。

農村基盤研究領域 地域計画担当主任研究員 遠藤和子

<補足説明>
飯舘村は、冷害に苦しむ貧しい村から誰もが活き活きと暮らしていける村へと、長い年月をかけこつこつと独自のむらづくりに取り組んできたところです。初期には、飯舘牛や野菜、花卉などの農畜産業振興、近年では、女性の力を活かして地域コミュニティを築く独自のむらづくり=「までいライフ」の実践により全国的にも知られています。

(関連資料)

4)最新の「農工研ニュース」より

■不快な水膜振動を解消 -越流ゲート用の新型スポイラー-

農工研メルマガ1号で紹介した「水膜振動を防止する技術」が農工研ニュース第73号に掲載されました。これを機会に、室内実験と現地適用試験の様子を水音付き動画にしてWebにアップします。

ゲートを越流する水膜とゲートの間には閉じた空洞ができます。従来のスポイラーは、水膜に切れ目を入れ、この空洞を開放することで水膜の不安定な振動を取り除きます。しかし、堰高が低く、越流水深が小さいと、その効果も現れにくいことが知られています。

この不快な現象を解消するため、官民連携で水膜を効果的に分割する方法を見出し、新型スポイラーの実用化に成功しました。動画では、水膜振動によって低周波音が発生している状況や、それが新型スポイラーで解消される状況が確認できます。

水利工学研究領域 基幹施設水理担当上席研究員 高木強治

(関連資料)

5)ズームイン

■新しい土壌水分測定法の計画基準への反映に向けて

最近の畑地農業の特色として、例えば、ミカン、梨やトマトの糖度を上げたり、サツマイモの形状や色を整えたり、市場で高い評価を得られるよう、かん水量を精密に調整する栽培方法の導入が盛んです。多様な末端での水利用実態を的確に把握し、畑地かんがい計画にも反映させる必要性が益々高まっています。

このような背景等を踏まえ、現行の土地改良事業計画基準「農業用水(畑)」(平成9年発行)は、農水省農村振興局農村環境課の下で平成21年度から改訂作業に入っています。その一環として、最新の測定機器等を活用して計画日消費水量等の基礎緒元を算定できないか、6月から各地で現地実証調査が開始されました。

誘電式水分計などの新しい土壌水分測定法を畑地用水基準の中に位置付けるには、様々な現地検証が必要です。当該基準の改定に反映できるよう、農工研のほ場でも精度の高い観測を行っています。

農地基盤工学研究領域 畑地工学担当主任研究員 宮本輝仁

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm16_05-01.pdf

6)こんにちは農業・農村

■サンゴの島で農業 -沖縄県伊江島-

伊江島は沖縄本島の北部にあり、フェリーで片道30分と日帰り可能な離島として人気があります。私は、九州沖縄農業研究センターで勤務して以降、伊江島のため池を研究フィールドの一つとしています。そこで、この島の魅力をご紹介します。

島内には熱心な農家さんが多く、葉タバコ、さとうきび、菊、島ラッキョウ、トウガン等の畑作と、ブランド牛の伊江牛の畜産(肥育)が盛んです。ただし、島には川がなく、水の確保には昔から苦労してきました。今でも、水道水は沖縄本島から海底パイプラインによって供給され、農業用水は道路に降った雨水を貯留し利用しています。

このような水事情を改善するため、現在、地下水をせき止めて貯留する「地下ダム」が造られており、より安定的な農業用水の確保と、さらなる農業の発展が期待されています。

企画管理部 業務推進室 企画チーム長 吉永育生

(伊江島のきれいな風景)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm16_06-01.pdf

7)農村の草花

■炎天下の畑地でもたくましく生きる -スベリヒユ-

今月は、真夏の日差しをいっぱいに浴びながらも、畑で地を這うようにたくましく生育する「スベリヒユ」を紹介いたします。作物ばかりでなく雑草もしおれかけてしまうような炎天下の畑のなか、なぜスベリヒユだけは元気なのでしょうか。その秘密は、以下の資料からご覧下さい。

農村基盤研究領域 資源評価担当主任研究員 嶺田拓也

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm16_07-01.pdf

8)研究者の横顔<New>

研究者のプロフィールをご紹介する新企画を開始します。農工研を身近に感じていただき、気さくに相談していただける環境を醸成するため、プライベートな一面も添えていきます。お楽しみ下さい。

■若杉晃介(わかすぎこうすけ)

大分県出身の九州男児。自己紹介で"若過ぎ(若杉)ですが"というギャグを入れるなかなかのおやじっぷりである。笑顔とバイタリティー満点の彼は農家の頼もしい存在になっている。

「水田の田畑輪換」という日本農業の重大な課題に取り組んでおり、彼の研究を見て農工研の魅力を知ることになった者も多いと聞いている。(他己紹介:松島健一)

(自己紹介)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm16_08-01.pdf

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