農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第14号(2011年5月号)

東日本大震災で被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。当所の対応状況については、臨時増刊号(第1報:4月6日発行第2報:5月13日発行)でお知らせしています。

目次

1)トピックス

■下水処理水を農業用水に -国際規格化の動き-

5月12日・13日に、オーストリアのウィーンで、第2回「下水処理水の灌漑利用に関する規格化プロジェクト委員会(PC253)」が開催されました。この規格化は、再生水の水質基準ではなく、都市排水を農業に利用するための各種施設の整備水準を対象にしています。私は、農水省の依頼を受け、農業用水の水質保全の専門家として日本代表団に加わりました。

乾燥地や半乾燥地、大都市部で人口増加が著しい地区近郊では、慢性的な水不足を緩和するため、都市排水の再生水を農業に利用しようとする動きがあります。しかし、再生水の農業利用には、安全を確保するため、十分な管理基準を取り決める必要があります。

都市排水の灌漑利用に関しては、主に乾燥地や半乾燥地を対象とした世界保健機構(HWO)や米国環境保護庁(USEPA)の基準があるものの、国際規格はありません。そのため、イスラエルの発意で、ISOにおいて昨年から規格化の検討が開始されました。2013年に策定される予定ですが、我が国の農業のみならず、輸入作物の安全性にも関わるので、慎重に見極めていくことが重要と感じました。

水利工学研究領域水環境担当主任研究員浜田康治

<一口メモ>

イスラエルは、降水量の少ない乾燥地に適する点滴灌漑技術を開発し世界に供給している。今や各種の最先端水技術に支えられて砂漠の中の農業大国。

(説明資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm14_01-01.pdf

    2)イベントのご案内

    ■東日本大震災における農地・農業用施設等の技術支援報告会

    5月31日の13時30分~、東京大学農学部内(東京都文京区)の弥生講堂において、農工研がこれまで行ってきた被災地調査や技術支援の内容を報告します。また、4月に所内で立ち上げた復興支援プロジェクトチーム(代表:毛利施設工学研究領域長)において検討を進めている"生命(いのち)と生活(くらし)を守る減災対策と地域復興"の一部を紹介します。

    なお、5月12日に、当所のホームページでこの企画をご案内して以降、多くの方々から参加申込みをいただき、24日午前中で定員300名に達しました。事前申込みに漏れた方や参加できない方には、本会議資料を提供致しますのでご連絡下さい。本会の模様は、次号(6月)メルマガでもお知らせ致します。

    企画管理部 業務推進室 小川茂男

    (E-mail : nkk-unei◎ml.affrc.go.jp)
    ※メールを送信する際は「◎」を「@」にしてください

    3)新技術の紹介

    ■豊川用水路の改築費を7割削減 -コスト削減の取組-

    水資源機構 豊川用水総合事業部 山本英明 様、飯田直宏 様

    豊川用水二期事業の取組が、日経コンストラクション(2011.2.28No.514)で紹介されました。ストックマネジメントが国の施策として重点化されようとしており、この記事に関心をお持ちの方も多いと考え、概要を紹介することにしました。

    コスト縮減の観点から、全面改築方式を見直し、部分改築方式で施設の機能回復を行っています。先ず、水路をスパン毎に調査診断します。その結果、構造物の性能が要求性能を上回れば存置し、必要に応じて補修します。要求性能を下回れば改築します。そのため、目地の段差、ひび割れ幅・長さ、水路背面の空洞、目地の漏水・劣化という項目を測定し、総合的に判定しています。

    (関連資料)

    (一口メモ)

    • 明治以降に豊川(とよがわ:濁音)と改称され現在に至る。清音の(とよかわ)は、現在の豊川市の読みに継承。
    • 豊川用水事業計画は、渥美郡生まれの政治家近藤寿市郎氏が、インドネシアのジャワ島の農業水利事業をヒントに1921年に構想。
      http://www.aichi-c.ed.jp/contents/syakai/syakai/tousan/tou050.htm

    4)最新の「農工研ニュース」より

    ■GIS活用のすすめ -共同開発ソフト・VIMSの紹介-

    農業農村振興のため、様々な行政施策が推進されています。これを実行に移すためには、事業計画の策定が必要です。この作業には、住民参加というプロセスを組み込まないと合意形成は困難です。ただし、文字や数字の資料では、合意形成はなかなか進みません。住民の主観データを見える化し、共通理解を深めることが必要です。

    それでは、住民の意向をどう評価しどう定量化すれば良いのか?そんなお悩みの方に、私どもが開発したGISソフト"VIMS"とVIMS上で稼働する"住民参加地域づくり支援システム"をお勧めしています。

    開発したVIMSは、市販のGISソフトに比べ、操作性、価格、アフターサービスの面で格段に優れています。農地基盤や環境に関する情報や図面・写真整理の機能を標準装備し、前述した地域づくりに有効なアプリケーションソフトも用意しています。東日本大震災復旧作業にもご利用いただいております。お気軽にご相談下さい。

    技術移転センター 教授 山本徳司

    (関連資料)

    5)農村の草花<New>

    ■梅雨の花ツユクサ

    今月号から、農村でよく見かける季節の草花に注目し、その特徴をうんちくも交えて紹介していきます。

    今回は、梅雨の季節にコバルトブルーの美しく可憐な花を咲かせる「ツユクサ(露草)」を取り上げました。皆さんは、ツユクサが日本を代表する伝統工芸品を支えていることを知っていますか?

    農村基盤研究領域 資源評価担当主任研究員 嶺田拓也

    (関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm14_05-01.pdf

      【編集発行】

      〒305-8609 茨城県つくば市観音台2-1-6
      (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
      企画管理部 情報広報課 Tel:029-838-8169