農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第23号(2012年2月号)

東日本大震災の復旧・復興支援状況については、ホームページに開設した特設サイトでお知らせしています。

目次

1)トピックス

津波の水理模型実験などを紹介 -産官学の連携-

東日本大震災で被災した県、農水省、大学、学会に呼びかけ、2月22~23日に、津波や農地除染などをテーマに情報交換しました。 外部からの参加者は24名でした。

農工研では、津波への防災技術として、津波や地震に強い堤体構造(粘り強い堤体)、津波が堤防を乗り越えた場合でも背後地 の農地で減勢する対策(減災農地)の研究を進めています。

実効性の高い研究成果を早期に産み出すためには、関係者の情報が共有できるように連携を深め、様々な知見を結集していく ことが必要と再確認しました。

施設工学研究領域 土質担当主任研究員 松島健一

(津波実験動画(5分46秒))

2)水土里のささやき

■利根川に大量のサケ -魚道改築の効果-

水資源機構 利根導水総合事業所 管理課長 羽田野義勝 様

利根大堰は、首都圏の都市用水や利根川中流部の水田用水等 を安定的に供給するため、昭和43年に建設された河川横断構造 物です。当機構では、その建設当初から魚類に配慮し、3本の魚道を設置しました。その効果を上げるため、平成7~9年には、堰下流護床工の改築に合わせ、魚道構造を変更(改築)しました。

魚道の効果は、サケやアユの遡上調査によって確認しています。 改築以前のサケの遡上数は300尾未満でしたが、改築後は年々増 加し、平成21、22年度は1万尾弱、平成23年度にはついに1万尾を越えました。

この結果について、魚類専門家の中には、「東日本大震災で東 北地方の漁業が大打撃を受け、サケの捕獲量が減少したことが利根川の遡上増加に現れたのではないか」との指摘もあります。手放 しで喜べないかもしれませんが、今後の推移を見守りたいと思いま す。

(説明資料)

3)最新の「農工研ニュース」より

■中山間水田の耕作と流域管理の関係を探る

中山間地の水田は、ひとたび耕作放棄されると、豪雨で畦畔や田面が崩壊する危険が高まります。そこで私は、中山間水田の耕作や農地の管理が流域の流出特性に与える影響と、耕作放棄に伴って その流出特性がどの様に変化するのかを示そうと試みました。

現地観測データに基づいて解析したところ、流域の保留量は、人 が管理している耕作水田によっても支えられていることなどが明ら かになりました。

中山間地域の農地を保全するため、様々な行政施策が打たれて います。このような研究成果の積み重ねが、関連する施策の意義と継続を裏打ちすると考えています。

水利工学研究領域 水文水利担当研究員 吉田武郎

(関連資料)

4)農村工学研究所の動き

■研究行政技術協議会の開催

2月8日に、農村振興局の課長補佐と農工研の上席研究員ら約 60名が、農水省会議室で一堂に会しました。本会は、行政施策を推進するために解決していかなければならない技術課題と研究 計画のすり合わせ、人的なネットワークの強化を目的に開催されています。

本協議会は、農工研が国の試験研究所であった昭和57年に設置されました。農工研は平成13年度に独法化されましたが、行政支援型の研究独法となった今も毎年度開催されています。

6つの分科会(ストックマネジメント、防災、地域活性化、水・ 農地管理、温暖化対策、バイオマス)に分かれ、研究成果が行政現場などに効率良く受け渡される方策などについて熱心な論議が交わされました。

企画管理部 研究調整役 奥島修二

(会議の模様)

■農村工学試験研究推進会議の開催

2月16日に、標記の会議を当所の大会議室で開催しました。今年度から、農工研で実施中の研究課題を論議する大課題評価会議との合同開催としました。農水省の2つの部局、農研機構内外の14の研究機関、農業農村工学分野に関わる3つの関係団体から、あわせて27名にご出席頂きました。

平成23年度における、研究課題の進捗状況、東日本大震災への技術支援、行政との連携状況等を報告するとともに、本年度の研究成果を紹介しました。頂戴したご意見を参考にしながら研究活動を強化し、さらなる社会貢献を心がけて参ります。

企画管理部 業務推進室 企画チーム長 吉永育生

5)研究ウォッチ

■AGU Fall Meeting 2011でポスター発表 -世界最大級の学会-

12月5日~9日に、サンフランシスコで、アメリカ地球物理学連 合(American Geophysical Union:以下AGU)の研究発表会 (Fall Meeting)が開催されました。AGUは、地球物理学分野に おける世界最大級の学会です。農工研の水文分野からは3名が参加し、ポスター発表を行いました。

ポスター発表の場所は、幸運にも、会場で人通りの多いメイン ストリート付近が当たりました。そのため、会場を行き来する多 様な研究者が何人も立ち寄ってくれ、時間を気にせずにじっくりと議論することができました。

会場は、大勢の来場者で溢れていましたが、子連れの研究者の姿もあり、アメリカの子育て文化を肌で感じました。様々な分野の研究者たちから予想していなかった問いかけもあり、緊張の連続でしたが、貴重な経験になりました。

資源循環工学研究領域 水資源工学 担当特別研究員 工藤亮治

(関連資料)

6)農村の草花

■田んぼや水路につやのある葉を拡げる -タガラシ-

啓蟄を間近に控え、ようやく春の日差しも時折感じるようになっ てきたこの頃ですが、田起こし前の田んぼや水の流れている水路では、手のひらのような切れ込みで光沢のある葉が陽を浴びているこ とに気づくことでしょう。辛そうな名前のついているこの「タガラ シ」、有毒植物であることを知っていますか。

農村基盤研究領域 資源評価担当主任研究員 嶺田拓也

(関連資料)

7)研究者の横顔

■浜田康治(はまだこうじ)

今回紹介するのは、水質のことならなんでも聞いて欲しい水環境担当の浜田さんです。マラソンに参加したり、教科書は原著を選ぶなど、困難なことに果敢に挑む熱い九州男児です。

水質に関する研究が専門で、複雑に絡み合う現象を一つ一つ解明していき、農村地域における安心で安全な用水を確保するため、 日夜研究に励んでいます。(他己紹介:井上敬資)

(自己紹介)


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