西日本農業研究センター

所長室だより -「飛ばないナミテントウ」で農林水産省の若手農林水産研究者賞を受賞ほか-

研究センタ-の秋

秋も深まり、冷たい風が吹く季節がやってきました。近畿中国四国農業研究センターの桜の葉も赤く色づいています。

さて、今回は当研究センターのイチ押しの研究成果を2つご紹介しましょう。

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 ☆「飛ばないナミテントウ」が農林水産研究成果10大トピックスに選ばれました。

 http://www.s.affrc.go.jp/docs/10topics.htm

 

 

□「飛ばないナミテントウ」で農林水産省の若手農林水産研究者賞を受賞

 さる11月12日(水)に東京ビッグサイトで開催された「アグリビジネス創出フェア」において、農林水産省農林水産技術会議会長より当研究センターの世古智一主任研究員に平成26年度若手農林水産研究者賞が授与されました。

受賞の対象となった研究業績は「飛ばないナミテントウの育成と生物防除への応用に関する研究」です。これは、アブラムシの防除に有効な飛翔能力を欠いたナミテントウ系統(飛ばないナミテントウ)を育成するとともに、実用化に向けた品質管理法の開発や様々な作物・栽培環境での有効性を実証し、施設野菜類においては既に天敵製剤として商品化されている点が高く評価されたものです。

また、遡る9月25日(木)には、世古智一主任研究員と同じく当研究センターの三浦一芸主任研究員が連名で農研機構の「NARO Research Prize 2014」を受賞する(業績は「飛翔能力を欠くナミテントウ製剤の利用技術マニュアル」)など、この研究分野における当研究センターの研究活動が内外から注目を集めています。

本研究成果が普及すれば、施設野菜類において薬剤抵抗性アブラムシ対策の確立、地域農産物の生産増大、安全な食品の流通促進などの効果が期待されます。さらには、飛ばないナミテントウを露地で実用化することによって、広域での環境負荷低減が可能になります。

[詳しい資料は下記をご覧下さい]

○平成26年度「若手農林水産研究者表彰」受賞者決定の農林水産省プレス資料(10月29日)

http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/141029.htm

○NARO Research Prize 2014の授賞式(9月25日)

http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/research_prize/index.html

○飛ばないナミテントウのプレス資料(6月16日)

http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/warc/052752.html

若手農林水産研究者賞授賞式(世古)飛ばないナミテントウ

□夏の高温に強く、美味しく多収の水稲新品種「恋の予感」を育成

 近畿中国四国地域では、近年、登熟期間中の高温の影響で、主力品種である「ヒノヒカリ」で白未熟粒が多発し、玄米品質の低下が問題となっています。このため、この地方の平野部~中山間地に適した中生品種で、高温下で栽培しても玄米品質が優れ、多収で食味の良好な水稲新品種「恋の予感」を育成しました。

品種名は「ひとたび食すると恋するようなときめきや情熱のあるお米」となることを願い、JA全農ひろしまと協力して一般公募の上で選定しました。

「恋の予感」は、既に広島県で奨励品種に採用されており、本年は広島県内で約100ha作付けされ、来年以降、計画的に作付面積が拡大される予定です。今後、近畿中国四国地域の「ヒノヒカリ」普及地帯で、これに替わる新たな品種として普及が期待されます。

稲作に関しては、温暖化の影響を受けてお米の品質低下が大きな問題となっています。このため、このような研究に着実に取り組むことによって、気候変動にも対応した安定的な農業生産を実現し、農業生産者の所得確保と消費者への食料の安定供給に貢献します。

[詳しい資料は下記をご覧下さい]

○「恋の予感」のプレス資料(9月5日)

http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/warc/054028.html

「恋の予感」の草姿圃場見学

平成26年11月
近畿中国四国農業研究センター所長
尾関 秀樹