生物機能利用研究部門

遺伝子組換え農作物・食品ハンドブック

QVIII- 15 『遺伝子組換えトウモロコシの花粉を食べたチョウが死んだ』という報道がありましたが、その事実関係を教えてください。

Answer1

1999年5月20日の科学雑誌Natureに、コーネル大学ロゼイ博士らの以下のような論文が掲載されました。

Answer2

『トウワタの葉にBt毒素を発現する遺伝子組換えトウモロコシ(Btトウモロコシ)の花粉をまぶし、オオカバマダラの幼虫に与え、時間を追って生存率を調べたところ、Btトウモロコシの花粉をまぶした葉を食べた幼虫は、時間とともに生存率が減少し、4日後には44%が死亡した。また、葉を食べる量も少なく、体重増加量も少なかった』。さらに、『トウワタはトウモロコシ畑の近くに生育し、オオカバマダラの生息地域がトウモロコシの栽培地域と重なり、幼虫の発育時期が花粉の飛ぶ時期と一致するという事実から、オオカバマダラに有害な影響を及ぼす可能性がある』(Losey et al ., 1999, Nature , 399, 214)。

Answer3

オオカバマダラはチョウ目に属し、Btトウモロコシで作られるBt毒素はチョウ目昆虫に対し毒性を示すことから、オオカバマダラが摂食すれば影響が出ることは当然です。しかし、オオカバマダラはトウモロコシの害虫ではないので、トウモロコシを食べませんし、Btタンパク質を摂食する機会は少ないです。

Answer4

この報告を受けて、自然界における影響の重要性を考え、多くの調査研究が実施され、科学的な検証の結果、『実験室レベルでは影響が見られるが、自然状態ではオオカバマダラ個体群の存続に与える影 響は無視できる』と結論づけられています(たとえば、Sears et al. ,2001, Proc. Natl. Acad. Sci . USA , 98, 11937-11942など)。