生物機能利用研究部門

遺伝子組換え農作物・食品ハンドブック

QVIII- 2 米国で遺伝子組換えサケが開発されていると聞きますが、どのような状況ですか?

Answer1

米国のアクアバウンティ・テクノロジーズ社が開発したもので、AquAdvantage®Salmonと命名されています。2015年11月19日、FDA(米国食品医薬品局)はこの遺伝子組換えサケの食品としての 安全性や栄養成分は、科学的知見から非遺伝子組換えサケと同等であるという見解を公表しました。今後アメリカ内での販売に向けて養殖が進むと考えられますが、販売開始時期は未定です。

Answer2

この遺伝子組換えサケは、キングサーモン由来の成長ホルモンの遺伝子を大西洋サケに導入したもので、その成長速度は非遺伝子組換え大西洋サケの2倍ですが、成魚のサイズは非遺伝子組換え大西洋サケと同等です。

Answer3

カナダ東岸のプリンス・エドワード島で採卵し、飼育はパナマで行うとともに、三倍体処理を施したサケのみを飼育することが条件とされています。カナダでは2013年11月25日に、この遺伝子組換えサケ卵の商業用生産をカナダ環境省が認可しています(食用としての承認ではない)。アクアバウンティ・テクノロジーズ社は、「パナマ国内のタンクで飼育するので、万一流出しても熱帯の海では生存しにくい」、「三倍体にしてある(不妊なので繁殖不可)」、「非遺伝子組換えサケと遺伝子組換えサケの食肉成分は同じ」としています。

Answer4

AquAdvantage®Salmonが開発されてから十数年経過しています。動物では初めての遺伝子組換え食品なので、慎重な議論が重ねられてきました。食品表示がどうなるか注目されていましたが、安全性や栄 養成分は非遺伝子組換えサケと同等であるため、特別な表示は義務づけられませんでした。

Answer5

AquAdvantage®Salmonのメリットは、養殖期間の短さ、すなわち餌量の削減にあり、天然資源への負荷を減らしつつ、消費量の増加に対応できると考えられています。