生物機能利用研究部門

遺伝子組換え農作物・食品ハンドブック

QVIII- 21 『遺伝子組換えダイズを投与したラットの子供の死亡率が高く成長阻害が見られた』という研究結果が報道されていましたが、その事実関係を教えてください。

Answer1

ゲノムも遺伝子もDNAで構成されています。

Answer2

しかし、英国食品基準庁から「この実験からは、いかなる科学的で客観的な結論も引き出すことはできない」との声明が出された上に、複数の機関や専門家から下記のような問題点が指摘されました。

  • 得られたデータのばらつきが大きく、飼料の与え方や飼育方法のずさんさが影響して生育不良となった可能性が高い。
  • 安全性を評価する国際的なガイドラインなどに沿った試験方法ではない。
  • 動物の数が少なすぎて、なんらかの結論を導き出せるものではない。
  • 仔ラットを適切に選抜しておらず、栄養面などの問題で発育不良の原因となった可能性もある。
  • 遺伝子組換えダイズを食べていないグループでも、生育不良が多く見られる。飼料の成分自体に問題があり、発育不良となった可能性がある。

Answer3

以上の問題点により、エルマコバ博士の実験は、遺伝子組換えダイズの悪影響を科学的に検証したとはいえない、とされています。

Answer4

日本の厚生労働省と農林水産省も、わが国では、全ての遺伝子組換え食品について、食品安全委員会において安全性評価が行われており、遺伝子組換えダイズを食する場合でも問題はないとしています。

Answer5

遺伝子組換えダイズをはじめとして、これまでの遺伝子組換え食品の安全性評価において、慢性毒性試験が行われてないことが指摘されることがありますが、慢性毒性試験を行う必要がないと判断されているからです。
なお、東京都健康安全研究センターが、長期的な影響や次世代への影響を見るために、ラットのほぼ一生に相当する104週間(2年間)の投与試験と、マウスを用いた生殖試験(次世代試験)を行っているが、 遺伝子組換えダイズ投与群と非遺伝子組換えダイズ投与群の間に統計学的に有意な差は見られないと報告しています(くらしの健康 第8号)。