野菜花き研究部門

切り花の老化生理研究

担当者名:渋谷健市

研究目的

切り花の日持ちが短くなる要因は様々ですが、花そのものの老化が日持ち短縮の主な要因の一つになっています。私たちは花が老化する仕組みを解明することにより、切り花の日持ち延長技術の開発を目指しています。

花が老化する仕組み

花は仕方なくしおれているのではなく、自ら進んでしおれていきます。花は種子をつくるための器官です。人が見て美しいと思う花の多くは、昆虫を引き寄せて受粉を成功させるために、多種多様に進化したものです。したがって、受粉が成功したり、花が咲いてから一定の時間が経って種子をつくる能力が低下したりすると、植物は自ら進んで花弁(花びら)を老化させると考えられています。ただし、切り花の場合は、老化に加えて、水揚げ不良などの外的要因によってもしおれが早まります。

カーネーションやスイートピーなどの花では、植物自身が作るエチレンという植物ホルモンの働きによって、花弁の老化が進行します。これらの切り花では、エチレンの働きを阻害する薬剤を処理することで、日持ちを延ばすことができます。生産者は、通常、収穫直後にこのエチレン阻害剤(STS剤)を処理してから出荷しています。

一方、ユリやチューリップ、グラジオラスなどの花では、エチレンの働きを阻害しても日持ちを延長することができません。これらのエチレンが老化に関与しない花(エチレン非依存性花き)では、エチレンによる調節とは別に、開花後の時間経過(花の加齢)にともなって花弁の老化を調節する仕組みがあると考えられています。私たちは、アサガオをモデル植物として用い、花の加齢にともなうエチレン非依存的な老化を制御する仕組みの解明に取り組んでいます。

花が老化する仕組みについて詳しくはこちら

研究紹介

アサガオから花の老化を調節する遺伝子を特定

アサガオの中でも「紫」という品種では、花弁の老化にエチレンが関与しないことが知られています。私たちは「紫」を用いて、時間経過にともなう花弁の老化を制御する遺伝子(EPH1)とその機能を世界で初めて明らかにしました。EPH1遺伝子の働きを抑えたアサガオでは、花弁がしおれ始めるまでの時間が約2倍の24時間に延びました。ユリなどの主要なエチレン非依存性花きでも、同様の老化を調節する仕組みがあると推測され、花の日持ちを延ばす新技術の開発につながると期待されます。

 

 

 

アサガオの花は、通常、早朝に開花し、半日程度でしおれてしまいます。EPH1遺伝子の働きを抑えたアサガオでは、花が約24時間しおれずに咲いているため、撮影当日に咲いた花(上、紫色)と前日に咲いた花(下、ピンク)を同時に観察することができます。「紫」では、時間経過とともに花の色が紫色からピンクに変わります。

 

 

 

詳しくはこちら