アサガオ花弁老化時におけるオートファジー関連遺伝子InATG8の重複発現
要約
アサガオ花弁老化時のオートファジーの誘導には、複数のオートファジー関連遺伝子ATG8ホモログが関与している。
- キーワード:老化、プログラム細胞死、オートファジー、アサガオ
- 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-6801
- 区分:花き
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
花弁の老化はプログラム細胞死の一種である。このプログラム細胞死においては、自己の細胞質構成成分の分解機構であるオートファジーが重要な役割を果たしていることが示唆されている。本研究では、オートファジーの誘導に必要なAutophagy 8(ATG8)遺伝子ホモログをアサガオから単離し、発現様式を解析する。さらに、ATG8ホモログの発現抑制形質転換体を作出し、花弁老化におけるATG8の機能を解析する。これにより、花弁老化時のオートファジー誘導機構の解明を目指す。
成果の内容・特徴
- ATG8はオートファジーの誘導に必須なユビキチン様タンパク質であることが知られている。
- アサガオには少なくとも6種のATG8ホモログ(InATG8a-f)が存在する。
- InATG8a, b, d, e, fの発現が花弁の老化時に誘導される(図1)。
- 老化花弁で発現が誘導されることが知られていたInATG8fに関する発現抑制形質転換体(ATG8fR系統)では、老化時にオートファジーが野生型と同様に誘導され(図2)、花弁の老化に変化は認められない。
- ATG8fR系統では、InATG8f以外のInATG8ホモログの発現は抑制されず、野生型と同様に誘導される(図3)。
- InATG8fの発現のみを抑制してもオートファジーが抑制されず、野生型と同様な老化が起こるのは、花弁の老化時には複数のInATG8ホモログの発現が誘導され、これらのいくつかは同様の機能を持っているからと推察される。
- 以上の結果から、アサガオ花弁老化時のオートファジーの誘導には、複数のATG8ホモログが関与していることが示唆される。
成果の活用面・留意点
- 花弁老化時のオートファジー誘導機構の基礎的知見となる。
- InATG8fはShibuya et al. (Plant Physiol. (2009) 149:816-824) で一つだけ単離されていたアサガオのATG8ホモログ(InATG8)を再命名したものである。
具体的データ



その他
- 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
- 中課題整理番号:313b
- 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)
- 研究期間:2009~2010年度
- 研究担当者:渋谷健市、清水圭一(鹿児島大)、山田哲也(東京農工大)、市村一雄
- 発表論文等:Shibuya K. et al. (2011) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 80:89-95