カーネーション切り花の高温に対する反応
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要約
自己触媒的エチレン生成開始後のカーネーション切り花において、高温処理はエチレン生合成を阻害するが、花弁の萎れは抑制しない。
- キーワード:エチレン、カーネーション、高温
- 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-6801
- 区分:花き
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
カーネーション切り花を高温条件下で保持すると、自己触媒的エチレン生成が開始せず、花弁の萎れが抑制されることが報告されている。本研究では、高温による花弁の萎れ抑制作用について理解を深めるため、自己触媒的エチレン生成がすでに誘導されているカーネーション切り花において、高温がエチレン生成と花弁の萎れに及ぼす影響を解析する。
成果の内容・特徴
- 外生エチレン処理により、エチレン生成を誘導したカーネーション「バーバラ」の切り花を、高温条件下(38°C)で保持すると、自己触媒的エチレン生成の増加が抑制される(図1)。
- 高温を処理した切り花の花弁(高温処理区)では、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素とACC酸化酵素をコードするDC-ACS1とDC-ACO1の発現量が、対照区(23°C)に比べ低下している(図2)。
- 高温処理区では、ACC合成酵素とACC酸化酵素活性が低下しており、特にACC合成酵素活性が顕著に抑制されている(図3)。
- 花弁の萎れは、高温処理区でも対照区と同様に進行する(図4)。
- エチレン処理後23°Cで12時間保持し、極大値のエチレン生成を誘導した切り花(図1)を、高温条件下に移すと、エチレン生成が顕著に抑制される(データ略)。これらの切り花の花弁では、DC-ACS1とDC-ACO1の発現量の低下はほとんど認められないが、ACC合成酵素活性が顕著に低下している(データ略)。
- 以上の結果は、高温処理は、自己触媒的エチレン生成開始後のカーネーション切り花においてもエチレン生合成を抑制するが、花弁の萎れは抑制しないことを示している。また、高温によるエチレン生合成の抑制は、主にACC合成酵素活性の阻害に因ることを示唆している。
成果の活用面・留意点
- 品種により高温に対する反応性が異なることから、品種ごとに温度条件を検討する必要がある。
- 高温が花弁の萎れ以外の品質(花色等)に与える影響もさらに検討する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
- 課題ID:313b
- 予算区分:交付金プロ(気候温暖化)
- 研究期間:2003~2007年度
- 研究担当者:渋谷健市、市村一雄
- 発表論文等:Shibuya K. and Ichimura K. (2010) J. Japan Soc. Hort. Sci. 79:97-102