動物衛生研究部門

口蹄疫

5. 口蹄疫と戦う準備2 - 2010.4 小平 海外病研究施設 発生前 -

農研機構・動物衛生研究部門 部門長 坂本 研一

2010年1月には隣国韓国でAタイプ口蹄疫ウイルスによる口蹄疫の発生があった。韓国では2002年以来8年ぶりの発生となる。この発生の知らせを受けて、海外病研究施設では口蹄疫の病性鑑定に関わる会議が持たれた。その会議の中では具体的に実施する各種検査の役割分担を行った。口蹄疫の病性鑑定検査では、複数の検査が実施される。ウイルス分離、抗原検出ELISA、PCR、抗体検出ELISAのほか限られた人数の中でリアルタイムPCR、遺伝子の塩基配列解析、モノクローナル抗体を用いた抗原および抗体検査、中和試験などに対応する担当者が具体的に決められた。

その後、4月にも韓国で新たなOタイプ口蹄疫ウイルスによる口蹄疫の発生が確認されたため、2010年4月9日にすべての海外病所員あてにメールを発信した。

「海外病の皆様へ
韓国で本年1月についで新たに口蹄疫が発生したようです。前回はAタイプでしたが今回はOタイプだそうです。明日から1週間、○○主任研とオーストラリアに口蹄疫の国際シンポジウムで出張いたします。海外病研究施設で口蹄疫の病性鑑定がないことを祈っておりますが、万一の場合は、体に気をつけて、よろしくお願いいたします。
研究管理監(海外病担当)坂本研一」

幸いにも出張期間中には、口蹄疫の病性鑑定の依頼はなかった。しかしながら、帰国後1週間もしないうちに、口蹄疫とまた遭遇することになった。海外病研究施設職員全員にこのようなメールで注意喚起を促したのは、国内で口蹄疫が確認される10日ほど前であった。後に驚かされることなるが、口蹄疫の発生後に立ち上げられた疫学調査チームによる解析では、口蹄疫ウイルスは3月中にはすでに国内に侵入していたという報告がなされた。ということは、注意喚起のメールを発信する1月ほど前からすでに口蹄疫ウイルスは国内に存在したことになる。そんな状況であったことには一切気づかず、オーストラリアで開催された口蹄疫の国際シンポジウムでは口蹄疫の防疫方法に関する研究発表を偉そうに行った。

口蹄疫発生後、すぐにそのシンポジウムの責任者であるオーストラリアの研究者からオーストラリアの技術者をそちらに支援する準備があるとの親切なメールをいただいた。ご厚意だけ頂くとして、それとなくお断りのメールを打った。口蹄疫の病性鑑定の対応が終わってから、恥ずかしくて、オーストラリアには行きにくくなったと○○主任研と話し合った。

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