ポイント
農研機構では、農業機械技術クラスター事業において、これまで開発を進めてきた両正条田植機(研究期間:令和 4~6 年度)の早期実用化を図るため、両正条田植機と組み合わせることで除草作業を省力化する直交機械除草を核とした水稲有機栽培体系の実証研究に取り組みます。これにより両正条田植機における研究成果の普及とともに、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」で目指す有機農業の取組面積拡大(100 万ha)に資することが期待されます。
両正条田植機は縦横 2 方向での機械除草に適した両正条植え1)を可能とし、これまで除草の手間が壁となっていた水稲作での有機栽培の拡大につながると期待されています。本成果は 2024 年農業技術 10 大ニュースにも選定され、今注目されている研究のひとつです(https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/241220.html)。
農研機構では、生産現場の要望の実現を図るため、多様なメンバーで構成する「農業機械技術クラスター事業」(以下、技術クラスター、https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/iam/cluster/index.html)を 2018 年 4 月に立ち上げました。多様な現場ニーズに即応し、かつ異分野の知見を取り入れながら、農業機械の研究開発を行っています。
今回、本技術クラスターでは、新技術導入効果実証タイプに新たにポット苗仕様田植機2)およびマット苗仕様田植機3)を対象とする2課題を加え、研究を開始します(表1)。2課題の実証研究を同時に進めることで、早期の全国展開が可能になると見込まれます。
農研機構では、生産現場の要望の実現を図るため、多様なメンバーで構成する「農業機械技術クラスター事業」(以下、技術クラスター、https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/iam/cluster/index.html)を 2018 年 4 月に立ち上げました。多様な現場ニーズに即応し、かつ異分野の知見を取り入れながら、農業機械の研究開発を行っています。
今回、本技術クラスターでは、新技術導入効果実証タイプに新たにポット苗仕様田植機2)およびマット苗仕様田植機3)を対象とする2課題を加え、研究を開始します(表1)。2課題の実証研究を同時に進めることで、早期の全国展開が可能になると見込まれます。
- 【課題名】ポット苗仕様両正条田植機と直交機械除草を核とした水稲有機栽培体系の実証
(研究期間:2025~2027年度)
[目的] 農林水産省の「みどりの食料システム戦略」で掲げる有機農業取組面積の目標達成のためには、栽培面積が大きい水稲において有機栽培の取り組みを拡大する必要があります。水稲有機栽培では、手間のかかる雑草防除の省力化が重要課題とされ、水田用除草機が実用化されています。しかし、現状では機械除草で取りこぼした雑草に対して手取り除草を要し、有機生産者の増加や規模拡大を阻む要因となっています。
この課題を解決するためには、従来の田植機作業方向の条間(縦方向)に加えて植え付け方向の直交方向(横方向)もそろえて等間隔に植えることで、縦横2方向の直交機械除草が可能となる両正条植えが有効です。そこで農研機構は、両正条田植機の基盤技術をポット苗仕様田植機のメーカーと共同で開発しました。ポット苗は北海道を中心に普及し、本州でも有機栽培に一定数普及していますが、両正条植えと直交機械除草を組み合わせた有機栽培への適性について十分な知見がありません。また、両正条植えに伴い、慣行より栽植密度が低くなる疎植が収量や品質に及ぼす影響についても明らかにする必要があります。
そこで、両正条植えと直交機械除草を組み合わせた有機栽培への適性、両正条植えに伴う疎植が収量や品質に及ぼす影響について明らかにします。
[委託先] 両正条田植機ポット苗仕様コンソーシアム
研究代表機関名:みのる産業株式会社
共同研究機関名:農研機構 北海道農業研究センター
共同研究機関名:千葉県農林総合研究センター
- 【課題名】マット苗仕様両正条田植機の実用化モデル開発及び直交機械除草を核とする水稲有機栽培体系の実証(研究期間:2025~2026年度)
[目的] 農研機構は、両正条田植機の基盤技術をポット苗仕様田植機のメーカーと共同で開発しました。開発した基盤技術はポット苗だけでなく、普及面積の大きいマット苗仕様田植機にも展開可能ですが、現時点ではマット苗仕様田植機のメーカーへの技術移転ができていません。
そこで、マット苗仕様両正条田植機の早期実用化を図るため、メーカーが市販に向けた試作機を製作し、その作業性能評価試験を行うとともに、直交機械除草を組み合わせた実証試験を実施して有機栽培への適正、収量や品質に及ぼす影響について明らかにします。
[委託先] マット苗仕様両正条田植機コンソーシアム
研究代表機関名:株式会社クボタ
共同研究機関名:農研機構 東北農業研究センター
共同研究機関名:農研機構 九州沖縄農業研究センター
共同研究機関名:福井県農業試験場
問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構農業機械研究部門 所長 長﨑 裕司
研究担当者 :
同 機械化連携推進部 機械化連携推進室 室長 臼井 善彦
広報担当者 :
同 研究推進部 研究推進室 広報チーム長 大西 正洋
用語の解説
- 両正条植え
- ほ場一筆において、植え付けした苗の条間と株間を同じ距離に保ち、田植機の作業方向と直交する方向にも苗を直線上にそろえて植えることです。植え付けた苗が、碁盤の目のようにそろっているのが特長です。[ポイントへ戻る]
- ポット苗仕様田植機
- ポット苗とは、一つの苗(2~3株)に対して一つのポットで育苗した苗を指し、その苗を抜き取り、田んぼに植え付けるのがポット苗仕様田植機です。田植え時にはポットから抜いた苗の根を切ることなくそのまま植え付けるため、活着が良いという特長があります。ポット苗仕様田植機は、主に北海道で普及しています。[ポイントへ戻る]
- マット苗仕様田植機
- マット苗とは、浅い盆状の箱に床土を入れてその上に種籾をまいて育苗した苗を指し、植付爪でその苗の端から数株をかき取って田んぼに植え付けるのがマット苗仕様田植機です。本州以南で広く普及しています。[概要へ戻る]
参考
技術クラスターで2025年度に実施する研究課題は下表のとおりです。
表 1 農業機械技術クラスター事業研究課題一覧
研究課題名 | 研究期間 |
①地域農業機械化支援タイプ | |
らっきょう収穫機の開発 | 2023~2025 |
②革新コア技術実用化タイプ | |
高湿材適応コンバインの開発 | 2023~2025 |
小型電動農業機械用バッテリー保持機構の開発 | 2024~2026 |
③次世代革新基盤技術タイプ | |
土塊・石礫除去装置付きポテトハーベスタの開発 | 2023~2025 |
④新技術導入効果実証タイプ | |
現場改善による農作業安全の実証研究 | 2022~2024 |
ほ場栽培データと乾燥調製データを統合したデータ駆動型水稲作の実証 | 2023~2025 |
農作業安全を考慮した基盤整備事業におけるリスク低減効果の実証 | 2023~2026 |
ポット苗仕様両正条田植機と直交機械除草を核とした水稲有機栽培体系の実証【新規】 | 2025~2027 |
マット苗仕様両正条田植機の実用化モデル開発及び直交機械除草を核とする水稲有機栽培体系の実証【新規】 | 2025~2026 |