ポイント
- 農研機構は、「型取りゲージと摩耗深さ・表面粗さ測定アプリを用いた水路の摩耗調査手法標準作業手順書」を本日ウェブサイトで公開しました。
- 本手順書は、水路の摩耗調査手法(農林水産省のマニュアルに準拠)の解析作業を自動化する摩耗深さ・表面粗さ測定アプリの操作方法と、一連の調査手順を示したものです。
- 本手順書を活用することで、水路の摩耗調査を効率的に実施できます。また解析作業における個人差がなくなるため、調査結果の質が向上します。
概要

農業用コンクリート開水路(以下、水路)等の農業水利施設では、水や土砂が流れてくることによって表面が削られる摩耗劣化1)が生じます。摩耗が進行すると、施設の耐久性や水の流れやすさが低下し、農業用水の安定供給に支障が出るおそれがあります。こうした不具合を早期に発見し、適時適切な対策を検討するためには、施設の摩耗状態をモニタリングすることが重要です。
農研機構は、摩耗状態の調査手法として「型取りゲージ2)を用いた摩耗測定手法」を提案しています。本手法は、農林水産省のマニュアル3)にも掲載され、使用する器具が安価で現地作業も容易といった利点を有する一方で、その後の解析作業に多くの労力を要することが課題でした。
そこで農研機構は、本手法の解析作業を自動化する摩耗深さ・表面粗さ測定アプリ4)の操作方法と、一連の調査手順を示した標準作業手順書を公開しました。本手順書は、調査において測定精度を上げるポイントなどのノウハウを、写真や図とともに詳しく解説しています。また、アプリの使用により、調査手順のうち解析部分にかかる時間が、良好な通信環境下であれば30分超から数秒に短縮することができます。本手順書を活用することによって、水路の摩耗調査を効率的かつミスなく実行でき、調査結果の質が向上します。
【標準作業手順書の利用方法】
- 以下のURLより、本手順書のサンプル版(PDF)をご覧いただけます。
- 本手順書全編のご利用には利用者登録(無料)またはログインが必要です。
以下のURLより、「ログイン/利用者登録」のページにアクセスすることができます。
型取りゲージと摩耗深さ・表面粗さ測定アプリを用いた水路の摩耗調査手法標準作業手順書
用語の解説
- 摩耗劣化
- 農業水利施設の主要な劣化の一つで、長期間水を流していることによって施設の材料であるコンクリートが徐々に削られる劣化現象です。コンクリートが摩耗すると、コンクリート中の粗骨材(2~5cm程度の石)が露出し、水路表面に凹凸ができて流下能力が低下します。また、コンクリート内部にある鉄筋が表面に近くなるため鉄筋が腐食しやすくなり、構造耐力の低下を招くおそれがあります。 [概要へ戻る]
- 型取りゲージ
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写真のように横一列に並んだ針を対象に押しあてて、ずれた針の形をもとに対象の形状を写し取る道具です。[概要へ戻る]
- 農林水産省のマニュアル
- ここでは、「農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル【開水路編】」のことを指します。この中では、農業用開水路の補修を実施する際の材料・工法検討の基本的な考え方や施工管理にあたっての留意点、補修後のモニタリング方法等がまとめられています。 [概要へ戻る]
- 摩耗深さ・表面粗さ測定アプリ
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型取りゲージを用いた摩耗調査手法では「摩耗深さ」、「表面粗さ」という指標の測定と解析が必要です。摩耗深さ・表面粗さ測定アプリは、この解析部分を自動で行う機能を有したWebアプリケーションを指します。本アプリケーションは、解析プログラムとして農研機構の職務作成プログラムを搭載しています。
※アプリ、職務作成プログラムの詳細は手順書13ページをご覧ください。 [概要へ戻る]
関連情報
予算 : 農林水産省スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(うち国際競争力強化技術開発プロジェクト)、運営費交付金
問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構農村工学研究部門 所長渡嘉敷 勝
研究担当者 :
同 施設工学研究領域 研究員金森 拓也
広報担当者 :
同 研究推進部 渉外チーム中司 朋宏