役割
農業現場やその周辺で見出される生物の特殊な機能や物質に着目し、遺伝子組換え技術の活用を含め、その機能を発現する遺伝子や構造タンパク質を実生活において高度に利活用をする研究に取り組んでいます。
主な研究テーマ
I.遺伝子組換え技術の高度利用に関する研究
遺伝子組換え技術は、次世代の農業・食品産業においても重要なバイオ技術の1つとなっています。この技術を広く活用するには、安全性をより高いものに構築し、物質生産における効率性を向上させることが不可欠です。本研究では、組換え生物を生物学的に封じ込める技術の開発や、農研機構(旧農業生物資源研究所)が中心となって開発した遺伝子組換えカイコ発現システムによる希少有用タンパク質生産の効率化を図る研究を行っています。
培地に非天然アミノ酸(ヨウ化チロシン)を添加した場合において生存・増殖が可能になる大腸菌(写真左)。この微生物はヨウ化チロシンが存在しない自然環境では死滅してしまう(写真右)。このシステムの基本原理を高度に活用することにより、様々な組換え生物を安全に封じ込めることが出来る。
主な研究テーマ
II.生物の乾燥耐性機能を模倣した常温乾燥保存技術の開発
ネムリユスリカの幼虫はカラカラに干からびても、再水和によって生命活動を取り戻すことができる機能を持った生物です。この特殊な分子メカニズムを明らかにするため、農研機構(旧生物資源研究所)が中心となってゲノム概要解読を進め、ネムリユスリカ特有の遺伝子構造が明らかになりました。得られた知見の中から乾燥耐性たらしめる遺伝子を特定し、その因子を活用した生物試料(例えば食品用酵素や生ワクチン、家畜の卵細胞など)の新規な常温保存技術の開発を進めています。
ネムリユスリカ幼虫が乾燥すると、体内のLEAタンパク質(赤)の2次構造は転移し、共存するタンパク質(黄)の非特異的相互作用(凝集)が抑制される。再水和によってLEAタンパク質は元のランダムな状態に戻り、凝集による変性が避けられたタンパク質は、再び代謝活動を始める。
主な研究テーマ
III.繊維タンパク質を用いたバイオデバイスの開発
シルクタンパク質は化学反応性の高い官能基を有するため、化学的手法(化学修飾技術)や生物学的手法(遺伝子組換えカイコ技術)を用いて新たな特性を付与することが可能です。このため生体分子特有の機能を活かした新しい素材の開発が容易に行えると考えられています。 本研究ではシルク繊維に特定の酵素や糖鎖などを固定した新しい素材を開発することを行っています。