《背景とねらい》
我が国の食料自給率は、カロリーベースで40%であり、米の需要を拡大するためには、麺やパンなどへの米粉の利用を積極的に進める必要があります。米麺の製品化が一部で試みられていますが、コシヒカリ等の良食味品種を使った麺は、表面の粘りが強く、麺離れが悪いことが欠点とされています。麺離れが良く、製麺適性を持った、粘りが少ない高アミロース水稲品種を育成し、地元の製麺企業、市町村、JAとの共同研究により、地域特産物として米麺の製品化を図ることを目的としました。
《成果の内容・特徴》
- 短粒の日本型品種であるため(写真1、2)、選別、精米などに既存の調整方法が適用できます。
- 白米のアミロース含有量は、「コシヒカリ」より15ポイント程度高く、麺に加工した場合に麺離れが良い商品の開発が可能です(表1、写真3)。
- 「コシヒカリ」より、出穂期は2日ほど早く、成熟期はほぼ同じで、育成地では“中生の早”に属します。稈長は、「キヌヒカリ」並の“やや短”、穂長は“やや短”、穂数は「コシヒカリ」よりやや少ない“中”、草型は“偏穂重型”です。耐倒伏性は「コシヒカリ」より強く、“やや強”です。収量性は、標準的な標肥区では「コシヒカリ」よりやや少収ですが、施肥が多い場合では「コシヒカリ」並です。千粒重は、「コシヒカリ」よりやや重い“中”です(表2)。製麺適性には、標肥・多肥栽培間で差はありません。
《品種の名前の由来》
新たな需要が見込まれる米麺の原料として、米どころを香り高く彩るイメージを表しました。
《製品の特長》
素材の良さを損なわないように、時間をかけて水挽きで製粉した米粉を使い、じっくりと蒸気をあてる「蒸製法」により造りました。麺はコシが強く、切れにくく、米本来の味が活かされています(写真4)。
表1 越のかおりの白米中のアミロース含量と製麺時の麺離れ

表2 生育特性(育成地)


写真1.越のかおりの籾と玄米 (左:越のかおり、中:コシヒカリ、右:キヌヒカリ)
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写真2.越のかおりの草姿 (左:越のかおり、中:コシヒカリ、右:キヌヒカリ)
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写真3.越のかおりの米麺 (左:越のかおり、右:春陽(中アミロース)) |
写真4.製品「越のかおり米の麺」 |