ポイント
農研機構は、水田作におけるスマート農業導入効果を可視化するための「農業経営計画策定支援システム」を開発し、その一部を公開しました。
このシステムは、スマート農業実証プロジェクトで得られたデータをもとに構築した農業経営指標1)と、それを活用してシミュレーションを行うWebアプリで構成されています。スマート農業を導入した効果を簡易にシミュレーションすることができます。
概要
スマート農業の導入には、追加の農業機械投資が必要となるため、収入増加や経費削減、労働時間の短縮といった生産性向上効果と、新たな経費負担を事前に評価し、詳細な経営計画を立てることが重要です。こうした効果は経営規模や立地条件によって異なるため、自らの経営条件に合わせた推計が求められます。
このため農研機構では、スマート農業技術の導入を検討している農業者や普及指導機関が、経営収支や年間作業時間の変化を、経営条件を変えながら繰り返しシミュレーションすることで、対象経営の現状や将来の経営意向に合ったスマート農業技術の導入計画を立てられる、「農業経営計画策定支援システム」の開発を進めてきました。
本システムは、水田作経営を対象に、スマート農業技術の導入効果を推計した農業経営指標のデータベースと、それを用いて個別の経営条件に応じた導入効果をシミュレーションできるWebアプリで構成されています。
今回、まず移植水稲を対象とした320の農業経営指標(スマート農業技術を導入した場合の指標については、「ロボットトラクタと慣行トラクタの協調作業」、「操舵支援付き田植機」、「ラジコン草刈機」、「防除用ドローン」など、フルセット導入を前提としたもの)と、それらを用いたWebアプリの提供を開始しました。
なお、一部のスマート農業技術のみを選択して導入する場合の効果を示す農業経営指標については、現在、提供方法を検討中です。また、水田作経営全体の計画策定に必要となる麦・大豆の農業経営指標についても、早期の提供に向け検証を進めています。
農業経営計画策定支援システムは、ユーザーがWebアプリ上で気候(寒地/寒冷地/温暖地/暖地)、地形(平地/中山間)、経営規模(15ha/30ha/50ha/80ha/100ha)、ほ場区画(大区画/中小区画)、品種(多収/慣行)を選択し、スマート農業と慣行農業の10a当たりの収量、販売単価、費目別経費、作業別労働時間などのデータセット=農業経営指標(合計320指標)をWAGRI2)から取得します。
本アプリでは、農地面積や小作料、常時従事者の人数や臨時雇用の利用などの条件を設定し、取得した農業経営指標を組み合わせて、売上高、変動費、減価償却費、経常利益などをシミュレーションできます(図1)。試算結果を比較することで、経営条件に合ったスマート農業技術の導入投資や、その効果を活かした規模拡大などの経営計画を事前に検討することが可能です。
さらに、労働時間は旬別に棒グラフで表示されるため、田植えや稲刈りなど、繁忙期の労働負荷の現状と、スマート農業導入による省力効果を視覚的に把握でき、規模拡大や雇用導入に向けた判断材料として活用できます。
関連情報
予算 : スマート農業産地形成実証(令和3年度補正)、生物系特定産業技術研究支援センター
: スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)農林漁業者の高齢化や担い手不足等、生産現場の課題解消「スマート農業導入支援サービス」