ポイント
農研機構と広島県は、イチジク株枯病1)に極めて強い抵抗性を有するイチジク台木新品種「励広台1号」を育成しました。本品種はイチジク株枯病に真性抵抗性2)を有するイチジク属野生種「イヌビワ」3)とイチジクとの種間雑種から選抜されました。イチジクの主要品種である「桝井ドーフィン」4)や「蓬莱柿」5)などと接ぎ木親和性6)があり、挿し木繁殖性も良好であることから実用的な株枯病抵抗性台木として期待されます。
概要
イチジク株枯病(以下、株枯病)は、わが国で確認されたイチジクの難防除病害です。本病に感染したイチジクは葉の萎凋・落葉後、枯死します。株枯病は主に土壌伝染で広がり、発病園の土中には耐久性の胞子が残るため、改植しても2~3年で再発します。
客土7)と農薬の土壌灌注が推奨されていますが、多くの労力と経費を要するため、株枯病抵抗性台木が強く望まれてきました。現在はイチジク(
Ficus carica)の中で比較的株枯病に強い品種を台木に利用していますが、罹病のリスクを完全には避けられません。一方、日本在来のイチジク属野生種であるイヌビワ(
F. erecta)は株枯病に真性抵抗性を有しています。しかし、イチジクと接ぎ木親和性がないため台木としての利用ができませんでした。
そこで農研機構と広島県は、イヌビワとイチジクの種間雑種からイヌビワと同程度の株枯病抵抗性を有し、「桝井ドーフィン」や「蓬莱柿」と接ぎ木親和性があるイチジク台木新品種「励広台1号」を育成しました。
関連情報
予算:農研機構生研支援センター・イノベーション創出強化研究推進事業
品種登録出願番号:励広台1号:「34378号」(令和2年3月11日出願公表)
問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構果樹茶業研究部門 研究部門長 高梨 祐明
研究担当者 :
同 ブドウ・カキ研究領域 領域長 薬師寺 博
広報担当者 :
同 研究推進部研究推進室 果樹連携調整役 大崎 秀樹