動物衛生研究部門

プロジェクト概要

革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)
AIを活用した呼吸器病・消化器病・周産期疾病の早期発見技術の開発

畜産現場において、牛では、呼吸器病(ウイルス性、細菌性肺炎)、消化器病(鼓脹症、ルーメンアシドーシス、第四胃変位等)、周産期疾病(鈍性発情、排卵障害等)、また、豚においても呼吸器病(豚繁殖・呼吸障害症候群、マイコプラズマ性肺炎等)による経済的損失が大きな問題となっています。これらの家畜疾病を防除するためにはその徴候を早期に発見することが重要ですが、農家数の減少、農場一戸あたりの飼養頭数の増加に伴い、頭数あたりの従事者の少人数化が進む中、個々の疾病を早期に発見することは困難な状況となってきています。この問題を解決する手段として、家畜の健康状態を示す様々なバイタルサインを個体ごとに「見える化」し、人工知能(AI)を活用して自動的に検知・判断することで、異常を早期に発見して死廃事故や経済損失を回避する技術が求められています。

そこで、「革新的技術開発・緊急展開事業」(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)「AI を活用した呼吸器病・消化器病・周産期疾病の早期発見技術の開発)」では、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「生体センシング技術を活用した次世代精密家畜個体管理システムの開発」(H26~28年度)において開発してきた、体表温センサ、消化器病の早期検知のための多機能ルーメンセンサ、脈波センサを改良・改善し、社会実装することを目指しています。そして、得られるセンシング情報をベンチマーキング情報等と共にクラウド上で機械学習手法により複合的に解析して疾病検知・早期発見する技術、すなわちAIによる解析技術を開発し、同時に、それらの情報をユーザーに分かり易く提示するためのインターフェースを搭載したアプリケーションを開発することを目標としています。豚の呼吸器病早期発見のためには咳や呼吸音等を感知するシステムを開発することを目指しています。

開発する一連のシステムを用いることによって、早期発見した個体の疾病兆候を畜主や管理する獣医師がいち早く気付くことができ、早期に治療を開始することによって経済的損失の低減が期待されます。

研究代表 佐藤真澄(農研機構 動物衛生研究部門)