臨床研究結果
ケース1
作業中の事故によって脳に損傷を負った40歳代男性を対象にSFAプログラムを実施したところ、左半側空間無視の症状が改善しました。
男性は受傷から3年が経過した後も左半側空間無視の症状が残存していました。左半側空間無視とは、脳の右半球の損傷によって左視野の刺激に注意が向き難くなる症状です。そのため、SFA実施前は、左側の線分(破線内)に注意を向けられず、印が付けられていません。しかし実施後は、破線内を含め全ての線分に印をつけられました。症状の改善は5ヶ月後も持続したことを確認しています。
ケース2
脳卒中後の50歳代男性ではSFAプログラムの実施後に描画能力が向上し、視空間認知能力の改善が示唆されました。
SFA実施後には、図形の輪郭(長方形)を捉えることができるようになりました。
グループスタディ1

不慮の事故や脳卒中などにより認知機能に障害を負った16名の高次脳機能障害※者(平均43.8歳)を対象として、4週間で6回のSFAプログラムを行いました。
同プログラム中に4回行なった記憶テストでは、SFA実施群の平均得点が12.7点から23.3点へ有意に上昇し、4回目のテスト得点は非参加群(11名)と比べると4割以上高い値を示しました。記憶力の向上効果は3ヵ月後も保持されていました。
(Frontiers in Psychology, 9, 1328, 2018より)
どんな記憶テストをしたの?
被験者は最初に原図(左下)を模写しました。その後、被験者は原図を見ないで記憶を頼りに再び図形を描きました。テストの得点は、被験者が描いた図形の正確性をもとに0-36点の範囲で採点されます。右下はSFAプログラムに参加した記憶障害の男性が実際に描いた4回分の描画図です。プログラムが進むにつれて、記憶を頼りに描ける部分が増えました。

※高次脳機能障害とは、不慮の事故(交通事故や転倒)や病気によって脳に損傷を負い、記憶や注意、言語などの認知機能が低下し、生活に支障をきたしている状態を指します。
グループスタディ2

SFAプログラムで作成したフラワーアレンジメントは参加者が自宅に持ち帰ります。そこで、自宅に飾られたフラワーアレンジメントが介護をする家族の精神症状に与える影響を調べました。
高次脳機能障害の方を介護する主たる介護者を対象として、被介護者がSFAプログラム(8日間で3回)に参加する前と後に神経症状に関するアンケート(GHQ:精神健康調査票)を実施しました。その結果、被介護者がSFAプログラムに参加し、作成したフラワーアレンジメントが自宅等に飾られるようになった後、家族を中心とした介護者の神経症症状が軽減※しました。
※フラワーアレンジメントを飾ることにより、介護者の不眠が改善され、社会活動参加への意欲が向上する傾向が示されました。