ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

池永 幸子 本部 東北農業研究センター 主任研究員

京都大学博士課程修了後、農研機構契約研究員(東北農研(福島拠点)、中央農研(つくば本所))、任期付研究職員(中央農研(北陸研究拠点))を経て、平成23年より東北農研(盛岡本所)。

育種はチームワーク 与えられた役割に自分の視点を加えたい

研究しているのが好き

就職のために今後の人生設計を考えたとき「研究しているのが好き」でした。他の事をやることを想像しても、しっくりこない。何か大変なことがあったときに、がんばりきれないんじゃないか。やりたいことをやろう!と思いました。大学での研究は、論文を書いたらそれで終わり、という感じが自己満足のようで寂しい。そこで、農研機構の契約研究員を経て、任期付研究員として採用され、中央農業研究センターの北陸拠点で3年、大麦の栽培の現地実証試験を担当しました。現地での試験は、思い通りにいかないことが沢山あります。北陸拠点では、初めてみる粘土質で排水性が悪い圃場、大麦の生育が著しく停滞しました。東北農業研究センターでは、震災復興に携わり、現地の小麦栽培試験を担当しましたが、震災によって暗きょが壊れていたり、様々な要因で1年目は湿害がひどくて、越冬後小麦が消えました。明きょの手直しをしましたが、時すでに遅し。農家さんから逆になぐさめられました。そこで、土壌や農業機械の先輩研究員に相談し、湿害対策の方法や機械作業での工夫の仕方を教えてもらいました。2年目以降、徐々に収量がとれるようになりました。問題に直面し、自分ひとりでは解決できない時グループの内外で他の分野の研究者、業務科職員を頼って連携することを学びました。

育種はチームワーク

パーマネント研究員になり東北農業研究センターの麦の育種グループに配属になりました。栽培から育種へ分野が変わったので、始めは周囲の研究者が話す専門用語も分からず戸惑いました。どう動いてよいか理解できず、調査項目を忘れていたりして、どうしよう、もうダメかも、と思ったりしました。同期の職員に、『3年がまんすれば何とかなる。』と言われましたが、今思えばホントに何とかなりました。栽培に加えて育種の視点も加わりました。これをどう活かすかは自分次第、ですね。

4カ所の研究所で働いて

現在、農研機構内で4カ所めの研究所で働いています。新しい土地に行くのが好きなので、あまり困ったことはありません。気象や生活環境、人の気質、食べ物が違う地域で生活することは、良い刺激になりました。北陸研究拠点で身長を超える豪雪を経験したことは、降雪がない温暖地出身の私には、とても新鮮な経験でした。知り合いも増え、それぞれの場所で仕事内容も違い、また作物の生育特性が違うので視野が広がり、今につながっていると思います。

出産と子育て

妊娠が分かったとき、進行中のプロジェクトのことを考えたりすると、もっと仕事をしたいのに、と残念な気持ちや、出産する年齢的には今しかない、と思ったりしました。1年弱の育休を終えて復帰してみたら、心配するようなことは何もありませんでした。育休中は、現地への出張の必要があったため、代替職員の方が対応してくれました。復帰後は、自分の体力や子どものため残業はできないので、決められた時間に処理しなくてはなりません。育種の仕事はどこかが滞るとチーム全体に影響してしまいます。そこで、研究支援要員の雇用経費補助により、契約職員のサポートが得られてとても助かっています。農研機構は女性が働くサポート体制があり、出産や子どもの病気など働く時間が限られていても、上司や同僚のサポートもあり職場の雰囲気が良く働きやすいと感じます。現地へ出張に行って不在にすることも多いので、「お母さん行かないで」と寝言を言っているのを聞くと切なくなりますが、子どもと一緒にいる時間を大事にしようと心掛けています。

ブラスバンドで息抜き

盛岡に来て、子育て中の団員がたくさんいる吹奏楽のサークルに入りました。月に1、2回みんな子どもをおんぶしたり抱っこしたりしながら練習しています。中学時代に吹奏楽で使っていたクラリネットを引っ張り出してきて、かびをきれいにして使っています。東北農研の職員ともミニコンサートをしたり、年に1回、盛岡で開催される指揮者の佐渡裕さんのコンサートにみんなで参加します。コンサートでは、楽器を持参するとアンコールで舞台に上がって一緒に演奏できるのです。「佐渡さんの指揮で演奏したよ」、と自慢できたりして楽しいですね。