ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

樽本 祐助 九州沖縄農業研究センター 企画部産学連携室長

大阪府立大学農学部修士課程修了後、農林水産省入省。九州農業試験場及び九州沖縄農業研究センターで農業経営研究を担当し、平成25年に種子島(サトウキビ育種グループ)へ赴任。平成29年4月より現職。

新しいことを知れることが好き。「ワクワク」したい。

農業の現場を知る

世の中をより良くする仕組みに関心がありました。大学で農業経済を専門として選んだのは、現場と技術、さらに自分の切り口の三つが重なる境界に興味があったからだと思います。就職して始めの5~6年は、泳がせてもらっていた感じです。家畜ふん尿処理における環境問題から、畜産に関わるようになりました。農村に行って現地調査をするのですが、単にお話をしていた時間が長かったです。現地の畜産や稲作、畑作の現状を知ることは面白かった。僕はしつこいから何回も同じ農家へ行く。『また来たね。なんや~?』とか言われてそれも嬉しくて。現場が僕を教育してくれました。いろんなご縁で、堆肥や畜産経営についての話題提供を行ったり、マニュアルを書いたり、コンサルタントの委員をさせてもらったりしました。それによってだんだん知識も増えたように思います。それが学位を取得するきっかけにもなりました。

サトウキビとの出会い

学位取得後にサトウキビの生産や経営について調査を始めました。サトウキビを栽培している南西諸島の大きな島はすべて廻り、農家や製糖工場の方など、いろんな関係者と話をしました。これまでの経験から、自分の切り口を持って話を聴くことできるようになりました。日本のサトウキビ生産は苦戦しているので、もう少し良い仕組みにできるのではないかと思いました。そこで自分なりのシミュレーションによる研究や提案が貢献できる可能性があると感じてわくわくしました。日本では1月~3月に集中してサトウキビを収穫し、砂糖を絞ります。こうした短期集中型は効率的ですが、長い目で見たら別の見方もあるのではないかと思ったからです。日本はサトウキビ栽培地帯としては寒いので、糖度が十分上がるのを待つため、早くから収穫はしないのです。そこで、異なるスペックの品種の導入、栽培期間や製糖期間のシミュレーションを行って、全体がより良くなるための条件を研究しました。サトウキビの海外調査にも行きました。タイの東北部に3年ぐらい、10回以上通ったかな。この調査も面白くて、JIRCASに転籍希望してみたのですが、叶わなかったな(笑)。

種子島に赴任

サトウキビの育種グループがある種子島に赴任して4年間在籍しました。育種は初めてでしたが、選抜なども分担しました。サトウキビの育種委員会(育種の方向性や奨励品種を決める)においても、単に品種の良さだけでなく、これから求められるサトウキビについての考えを主張し、関 係者とディスカッションすることができたと思います。またサトウキビは遺伝解析が遅れているのですが、トヨタ自動車と共同でゲノム研究を行って います。マーカーによる系統分類を育種に関連づけるため、系譜(親子情報)のデータベースの基盤を作ったりもしました。
種子島では、研究分野やテーマが変わり不安もありましたが、その後どっぷり漬かった感じです。僕は、新しい仕事をもらったとき、「取り組みがないことで、自分にできることはなんだろうか。」と考えます。

種子島で楽しんだこと

サーフィンを始めました。海がきれいで、海に入るだけで幸せな気持ちになります。なかなか上手くならずに、ほとんど溺れているような感じだったけど、たまに立てるようになって嬉しい。楽しさ? 例えて言うなら、自由なジェットコースター。滑り台の上で板の上に立っているような感じです。地域のバドミントンサークルにも参加していました。一度だけ40代ダブルスの部で種子島・屋久島を制覇し、鹿児島県大会に出場しました。地元の人とタイトな人間関係を築けたのも良かったと思います。小学校に「サトウキビの先生」としてお話をしに行ったりもしました。