ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

篠遠 善哉 東北農業研究センター 生産基盤研究領域 研究員 筑波大学大学院生命環境科学研究科博士前期課程修了後、2014年に農研機構に採用され、現職。

夢は子実用トウモロコシ栽培が日本に広まること

学生時代の留学とトウモロコシの研究

大学3年生の時、タイのカセサート大学農学部に1年間留学しました。筑波大学は国際交流に積極的で、単位交換のシステムがあったのですが、どうせ大学に4年間通うのなら、1年くらい海外で勉強するのも良いかな、と思って利用しました。修士課程になり、所属研究室の共同研究の一環で、エジプトのナイル川デルタでトウモロコシの節水栽培に関する研究をしていました。

日本の稲作と輪作

今、日本の水田は約240万ヘクタールありますが、お米を食べる人が減っているから、そのうちの6割程度にしかイネは植わっていません。イネが植わっていない水田ではムギ、ダイズ、野菜などが栽培されています。
東北農業研究センター(東北農研)では、イネと畑作物を水田で輪作するための研究をしています。水田でそのまま畑作物を栽培すると湿害が発生する場合があり、収量が安定しません。水田を畑に換えるためには、水田に水をためる地下の堅い層を耕して壊し、水はけをよくする必要があります。これには東北農研で技術開発し ている「プラウ耕鎮圧体系乾田直播」で利用しているプラウを利用します。これまで主流のロータリ耕は歩く位のスピードで耕しますが、プラウ耕は走る位のスピードで耕せるため、大面積を効率よく作業できるメリットがあります。

良い時に良い所に

農研機構に就職したとき、トウモロコシの研究をしたかったんですが、配属先が水田の研究室だったのでできないかな、と思いました。日本で消費されるトウモロコシ子実はほぼ100%輸入に頼っており、国産のトウモロコシ子実は一部地域を除いてほとんど栽培されていませんでした。それでも上司に相談し、1年目は小さい圃場でちょっと所内試験をやらせてもらいました。トウモロコシは、飼料、コーンスターチやスナック菓子の食用、糊などの工業品までと需要は無限にあります。岩手県等では水田転換畑でトウモロコシ栽培に取り組む先進的な農家もいたり、農業雑誌でも取り上げられたりで、徐々にトウモロコシを水田輪作に取り入れる機運が高まり、プロジェクト研究にも入れてもらえることになりました。今は、日本にはなかった輪作体系としてイネ-トウモロコシ-ダイズをプラウ耕を利用して栽培する技術体系を開発すること、もう一つは、これまでなかった国産汎用コンバインでのトウモロコシ子実の収穫技術の開発に取り組んでいます。収穫技術開発については主にメーカーが担当していますが、意見交換したり、一緒に所内試験をしたりして、開発した機械を昨年から販売してもらえることにもなりました。今思うと、プラウ耕鎮圧体系乾田直播というキーとなる技術が東北農研になければ、ここでトウモロコシの研究をすることには繋がらなかったので、恵まれていたと思います。

海外のトウモロコシ産地の調査

プロジェクト研究や農研機構の国際室の制度で外国にも調査に行かせてもらえています。外国に行くのは好きなので、めちゃくちゃハッピーです。同期もしくはプロジェクトを一緒にやっている先輩達と去年はアメリカとタイに、今年はアメリカ、フランス、イタリアにトウモロコシ関係の調査に行きました。調査先は様々なツテを頼って自分たちで交渉しています。アメリカのコーンベルトでは一面に広がるトウモロコシ、ダイズに感動し、ヨーロッパでは大きな農業機械展に行ったり、収穫後の流れを重点的に見せてもらったりして、研究で使えるアイデアを増やしています。タイではトウモロコシの専用収穫機をみたときに「いいな!」と思って、昨年、それを導入して研究プロジェクトで利用できたりと、今の仕事にも繋がっています。

後輩へのメッセージ

農研機構に入って、研究に関わるスタッフが充実していると感じます。研究のアドバイスや応援してくれる先輩研究者もそうですが、圃場での作業をサポートしてくれる業務科の方々もいて、気づいたことをいろいろと、ほっとかないで教えてくれます。例えば、種の蒔き方もこうした方が良いんじゃないかとか、より効率的にできる方法とかいろいろ言ってもらえます。
大学の後輩とかで農研機構に入りたい人には、「やる気」と「コミュニケーション力」と「体力」の3つが必要だと思って話しています。研究のスキルは後からでも身に付くので、それは就職後に一生懸命本人が身につけたら良いんじゃないかなって思います。

昨年導入したトウモロコシ専用収穫機の前で
業務科とグループメンバーとともに撮った画像/「職場のメンバーと一緒にスキーにいきました。快晴で山頂からの景色に感動しました」スキー場で職場のメンバーと撮った画像。/「週末は地域の方々と卓球を楽しんでいます」卓球をしている画像。