ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

中村 真人 農村工学研究部門 地域資源工学研究領域 上級研究員 神戸大学大学院自然科学研究科博士前期課程を修了後、(独)農業工学研究所、農研機構農村工学研究所、内閣府、農研機構本部勤務を経て、2016年から現職。

農村らしさを活かした再生可能エネルギーの研究で貢献したい

就職してバイオマスの道へ

大学時代は農業土木の学科で土質力学をやっていました。農村工学研究所(農村工学研究部門)に就職して、入ってみたら新設研究室、バイオマス(生物由来資源)利用システムの研究室だったんですね。大学時代とは全く関係のない研究室に配属されて、戸惑いはありましたけど、やるしかないですからね。まずは、与えられたポストで頑張ってみる、就職ってそういうものかな、と思います。
新設研究室だったので、まず研究テーマを探そうということで、室長と一緒に探したんですけど、バイオマス利用システムといっても、対象とするバイオマスも技術もいろいろあって、なかなか決まらない。講演会に行ったり、現場を見せてもらったり。それから、室長が大きなプロジェクトを取ってきてくれて、その中でテーマを作って走り出しました。
その頃バイオマスブームで、化石資源から再生可能なバイオマスに転換していこうという動きがあって、当時、家畜のふん尿や生ごみの活用を考えたときに、実用レベルの技術としてメタン発酵が有力でした。千葉県に乳牛のふん尿と野菜残さを原料としたメタン発酵プラントを建てて、得られたガスで発電する、ガス中のメタンを高純度に精製してメタン自動車を走らせる、発酵残さの消化液を肥料として利用する、炭を作るなど、いろんな技術をシステムとして組み上げて実証しましょうというプロジェクトでした。大学、国研、民間企業、農事組合法人、千葉県、市町村が一緒になって、個々の技術だけでは解決できないけど、それぞれの専門家の人たちが歩み寄ってシステム化すれば、いいものに仕上がっていくっていうのがおもしろいなと感じました。

内閣府や本部での出会い

就職して12年目に内閣府に出向しました。内閣府は他省庁や国研、民間企業からの出向者が多く、経産省、文科省、総務省、JST、民間企業からの出向者のグループで仕事をすることになりました。民間企業の人、行政官、国研職員と、それぞれ育った文化が違うので、同じものを見ていても、問題意識の持ち方、仕事の進め方が違って新鮮でした。本部研究戦略チームでは中長期計画を作る時だったので、それぞれの担当大課題の資料を作ったりしました。同年代のいろんな分野の研究者が集まっていて、農研機構にいながらも実はよく知らなかった果物やお茶の話はなかなか面白かったです。
研究から離れたことによりこれまで積み上げてきたものがリセットされ、焦りはありましたが、1回外に出て刺激を受けてよかったと思います。内閣府も含めていろんなところに行って、いろんな考え方を聞いて、他分野の人と仕事するのは面白いと思ったので。今までやってきたことプラス外の人とうまく連携して他分野をうまく取り入れて、そういう体制でやればいい研究ができるのではないかなと思いました。

メタン発酵でより効率的なシステムを作りたい

現在も取り組んでいることはメタン発酵です。農村地域で再生可能エネルギーの導入をさらに進めていこうという動きがあるのでそれに貢献したいと考えています。メタン発酵は、再エネを生産するだけでなく、廃棄物削減、消化液の肥料利用による資源循環の実現など複数の地域課題の解決に貢献できる技術です。農村には大きな施設を建てても、原料の収集が効率的ではない場合などもあり、メタン発酵の特長を活かして、小規模でもさまざまな効果が発現するシステムを作れればと思っています。

一時預かり保育室「なろりんルーム」を利用しました

妻は同じ農研機構の研究職員で、私が本部から研究部門に戻った年から2年間、在外研究制度でアメリカに行っていました。子連れだと渡米直後の手続きが大変なので、子どもたちは僕が3か月遅れて連れて行き、帰国時は1か月早く迎えに行きました。なろりんルームは先に帰国した際に利用しました。これをやっておかないとこれまでの準備が無駄になる、というポイントの仕事があります。そんな時に預かってもらえるのでありがたいです。子供にとっても居心地のいい場所のようでした。

研究の原点、山田バイオマスプラント(千葉県香取市)/ベトナムの水田での調査/出張の合間のランニング、シューズは30年以上A社製を愛用/時々山に登ります(浅間山)/マルチロードマップ