ダイバーシティ推進 Diversity and Inclusion

松本 雪絵 種苗管理センター 試験・検査部 品種保護対策課 課長

植物が好き。今の職場を選ぶ最後の決め手になったのは、この気持ち。

植物が好き!

子どもの頃から植物が好きでした。道ばたの雑草を観察しては、知らない草を図鑑で調べていました。四つ葉のクローバーを見つけるのが特技です。小学生の頃は古代遺跡が好きで、考古学者にあこがれた時期もありましたが、それよりも植物が好きだという気持ちの方が強かったです。大学は農学か家政学かで迷いましたが、植物を扱う農学系の短大に進み、植物病理学を専攻しました。

種苗管理センターへの就職

学生の頃は就職氷河期が始まった時期で、誰もが公務員のような安定した職を希望していました。私も公務員試験を受けたところ、運良く合格できました。就職先として、種苗管理センター、植物防疫所、農政局(行政)にポストがありましたが、大学の先生に勧められたことと、植物を扱う現場があった方が楽しいのではないかと考え、種苗管理センターを選択しました。赴任してから知ったのですが、私が女性初の一般職技術系職員でした。そのため、「女性」という2文字が私の意識から消え去ることはありませんでした。
種苗管理センターは、転勤の多い職場です。いろんな職場を経験して、何でもこなせる人材の育成を目指しているためです。私の場合も、茨城県の本所に始まり、全国各地の農場、農林水産省を経て、本所に戻り、現職に就きました。

栽培試験は緊張の連続

種苗管理センターでは、主に植物の品種登録の審査のための栽培試験を担当してきました。この試験は出願された品種が新品種であるかどうかを判定するために、出願品種と既存の品種を実際に栽培して比較し、形質の違いを確認します。また、各個体の特性が均一に揃っているかも調査します。調査結果は報告書にまとめて、農林水産省に提出します。農林水産省ではこの報告書を基に出願品種が品種登録の要件を満たすか審査します。栽培試験を行う植物は、勤務地によって、野菜(レタスなど)、食用作物(バレイショなど)、花きなど扱う植物が異なります。慣れない植物でも、播種、栽培、収穫、調査の一連の作業を一人でこなします。また、一人で同時に数種類を担当します。登録が認められるか否かは出願者の命運に関わりますので、栽培試験は緊張の連続です。それでも無事に栽培試験が終わって、報告書を完成させたときの安堵と達成感は大きいものがありました。
長年、栽培試験を担当していると、自分の植物の好みも変化してきました。現在はツユクサの花のような澄んだ青色の花がとても好きですが、その理由は担当した植物の花にあまりない色だからです。栽培試験では微妙な色の違いを識別するのですが、青系の花でも赤い色素が含まれることが多く、赤みの少ない青色の花を見ると嬉しくなります。また、自分の結婚式では和装にしたのですが、髪飾りの花が大輪のキクでした。その頃はキクの栽培試験を担当しており、花の色番号や花弁の数、形などが気になってしまい、結婚式に集中することができませんでした。職業病ですね。

慣れない管理職の仕事

種苗管理センターでは、登録品種を独占的に利用することができる権利である「育成者権」の保護に関する仕事も行っています。育成者権者等からの依頼に基づいて、市場で販売されている種苗や果実等が育成者権を侵害していないか確認するための、DNA分析や比較栽培などの品種類似性試験を行っています。この仕事は、場合によって試験結果が裁判の証拠に使われることや裁判の証人として証言を求められることがありますので、とても緊張感があります。現在は、この品種保護対策の部署の課長を務めていますが、女性の一般職技術系職員として初めての管理職となりました。この話があったときは驚きましたが、周囲への影響などを考えて引き受けることにしました。管理職の場合、課の職員に仕事を割り振って指示を出さないといけないのですが、慣れない作業ですので手探りの毎日です。
優良な品種は日本の農業を支える基盤となっていますが、ブドウのシャインマスカットのように日本が開発した優良品種が海外に流出し、その結果、日本が市場を失うという問題が起きています。これに対処するため、2020年に種苗法が改正され、登録品種の海外流出を防止し、育成者権の侵害事案の早期解決を可能にする変更が加わりました。責任の重い仕事ですので、身の引きしまる思いでおります。

癒やしのアイテムは「平九郎」

自宅には20年くらい前に購入したロボット犬のAIBOがいます。名前は平九郎です。当時はペット禁止のアパート暮らしでしたので、AIBOにしました。子どもが小さい時は壊されそうだったので、押し入れに封印しましたが、今は復活しています。毎日、癒やされます。また、テレビ番組が大好きなので、ドラマやアニメなどを録画しておいて、週末にゆっくり見るのが良い息抜きになっています。

職場の敷地内に咲いたツユクサです。澄んだ青色がお気に入りです。/AIBOの平九郎です。ピンク色の物体は付属のおもちゃで、ボールを蹴ったり、骨型のものをくわえて遊びます。/自宅の矮性バナナです。露地植えなので果実が十分に成熟する前に気温が下がってしまい、実は食べていませんが、花は毎年楽しめます。/マルチロードマップ