中日本農業研究センター

所長室より 所長就任にあたって

中日本農業研究センター 所長 鈴木 孝子

令和5年4月1日付で農研機構中日本農業研究センターの所長を拝命しました。就任にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

農研機構では、食料・食品分野における「Society5.0」の実現により、①食料自給率向上と食料安全保障、②農産物・食品の産業競争力強化と輸出拡大、③生産性向上と環境保全の両立に貢献することを目指しています。とりわけ、近年は新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻等により、食料安全保障の重要性が増しています。このような状況の下で、中日本農業研究センターは、関東、東海、北陸地域の農業を支える研究に取り組んでいます。

関東、東海、北陸地域のうち、関東および東海地域は、首都圏や名古屋などの大消費地に近接し、高品質な農産物、特に生鮮野菜の安定供給が期待されています。また、環境負荷の低減に向けて、国策として化学肥料・農薬の削減や有機農業の拡大が推進されており、生鮮野菜を中心に環境負荷の低い農法を拡大していくことが期待されます。一方、我が国の水田は、多面的機能を持つ高度な農業生産基盤です。我が国の米の消費量が毎年約10万トン減少していく中で、この生産基盤を有効に活用し、国内で不足している大豆や麦類を組み合わせて効率的に生産することは、食料安全保障や生産者の所得向上の観点から極めて重要です。関東、東海地域では、長期畑輪作の導入による大豆や麦類の増産が期待されます。米どころである北陸地域では、水稲・麦類・大豆等の輪作により麦・大豆の生産を拡大するだけでなく、米の輸出拡大も期待されています。

私たちは、このような関東、東海、北陸地域の農業ならびに農業経営が抱える様々な課題を研究開発によって解決し、地域農業の発展に貢献したいと考えています。そのため、中日本農業研究センターでは、第5期中長期計画において、都市近郊における高鮮度・高品質野菜の生産・流通、水田長期畑輪作におけるデータ駆動型畑作物複合経営、湿潤気象・重粘土壌に適合した排水対策や作付け最適化による高収益輪作と輸出拡大に貢献するための研究開発に取り組んでいます。これまでに培った行政部局、都県組織、民間企業、生産者等とのネットワークを活かして、全職員が一丸となって、研究成果の創出と速やかな社会実装に取り組んでまいりますので、一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

令和5年4月
農研機構 中日本農業研究センター
所長鈴木孝子