中央農業研究センター

畜産経営グループ

   畜産経営グループでは国産飼料の生産・利用の拡大を通じた畜産経営の収益性の向上と安定化に向けて、経済学や経営学などの社会科学分野の立場から、経営分析、開発技術の経済性評価、耕種と畜産の部門間連携による生産組織化方策の解明を行っています。
  我が国の畜産経営は飼料自給率が低く、国産の畜産物といえどもその大元は海外へ依存するという基本問題を抱えています。ただし、酪農・肉用牛の大家畜部門では必要な飼料のうち濃厚飼料は国内での生産コストが割高なため大半が海外産ですが、粗飼料(サイレージや牧草類)は国内でも条件次第で海外産に対抗できるコストでの生産が可能で、現に農地資源に恵まれた北海道などでは自給飼料の利用割合が高くなっています。
   これに対して府県の多くの地域は土地資源に恵まれないため、粗飼料自給率は低い状況にあります。粗飼料の購入依存はコスト高になりますが、特に府県の酪農部門では乳価が高いことから多頭化によって収益拡大を図ってきました。しかし、大半の飼料を外部に依存する経営は海外での価格変動の影響が大きく、さらに堆肥利用の点でも問題が生じます。他方で水田利用を取り巻く状況は大きく変化し、利用率の低下も問題となる中で、農地の有効利用の面からも飼料作物への期待が高まっています。水田での飼料生産に関する作物・栽培法、収穫調製法や収穫機械等の技術開発も進んできました。これらの状況を踏まえ、当グループでは府県の畜産経営を主な対象として次のような課題に取り組んでいます。
(1) 酪農経営の事例分析に基づく、新技術を取り入れた自給飼料の生産と利用が酪農経営の収支改善に及ぼす効果の解明
(2) 飼料の合理的な生産体系を構築するためのコントラクター等生産組織体制のあり方と運営方策の解明および作業計画策定のための管理システムの構築
(3) 肉用牛の肥育素牛生産コストの低減と収益性改善および農地の有効利用につながる放牧を最大限活用した繁殖経営モデルの提示
(4) 国産の濃厚飼料の生産拡大の条件・可能性に関する課題の整理と検討

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