- 牛
- 鹿
- 馬
- めん羊・山羊
- 豚
- 鶏
- その他・家きん
- 蜜蜂
- その他・家畜
対象家畜 :牛、水牛、鹿、めん羊、山羊、豚、いのしし
1. 原因
原因はRNAウイルスのピコルナウイルス科(Picornaviridae)、アフトウイルス属(Aphthovirus)の口蹄疫ウイルス(Foot-and-mouth disease virus)である。ウイルスゲノムは約8500塩基対の一本鎖(+)RNAである。ウイルス粒子はpH6.0以下あるいは9.0以上では速やかに感染性を失う。
7つの血清型(O, A, C, Asia 1, SAT1, SAT2, およびSAT3)があり、これらは相互にワクチン効果が得られない。また、多様な抗原性を示し、同一血清型でも抗原性に差が認められる。
2. 疫学
感染は年齢・性別を問わず成立する。口蹄疫ウイルスの宿主域は広く、偶蹄類の家畜(牛、豚、山羊、緬羊、水牛など)や野生動物(ラクダやシカなど)が感染する。感染動物は水疱形成前からウイルスを排出し、接触感染で容易に周囲の感受性動物に感染する。牛は口蹄疫ウイルスに感受性が高く、豚は牛に比べて低いが、感染後のウイルス排泄量は牛の100~数千倍といわれる。緬山羊では症状が明瞭でないため、本病を伝播する動物として注意が必要である。アフリカ水牛は不顕性感染し、長期間ウイルスを排泄するキャリアーとなる。
3. 臨床症状
口蹄疫の特徴的な症状は高熱(39°C以上)と口腔、舌、鼻、蹄だけでなく、乳房や乳頭にもみられる水疱の形成である。水疱は比較的早期に破れ、びらんとなる。水疱液には多量の感染性ウイルスを含み、ほかの動物への伝播の原因となるため注意が必要である。水疱形成による疼痛などにより泡沫性流涎、跛行、起立不能、泌乳の減少ないし停止がみられる。感染動物が死亡することはまれであるが、幼弱動物では突然死することがある。
4. 病理学的変化
口腔内、蹄冠部、趾間、乳頭・乳房等に水疱がみられる。水疱は形成後、すみやかに破れ、びらん・潰瘍になる。突然死した幼若獣では心筋の変性壊死病変(虎斑心)がみられる。
5. 病原学的検査
検査にはウイルスを多量に含む水疱液、水疱上皮等を用いる。キャリアー動物の摘発には咽頭拭い液(プロバング検査)を用いることもある。ウイルス分離は牛甲状腺あるいは牛腎初代培養細胞や豚腎培養細胞等を用いて行う。分離されたウイルスは抗原検出ELISAを用いてウイルスの同定と血清型の決定を行う。迅速検査法としてRT-PCR法により材料中のウイルス遺伝子の検出を行う。
6. 抗体検査
抗体検査は固相競合サンドイッチELISAおよび中和試験が実施可能である。 ELISAは検査当日に判定可能であるが、中和試験は数日必要である。また、感染動物とワクチン接種動物の識別に用いる非構造タンパクを抗原としたELISAが市販されている。
7. 予防・治療
口蹄疫と診断された場合は「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に基づき、感染拡大の防止のため、摘発・淘汰によって防疫措置が行われる。摘発淘汰のみで感染の拡大が止められないと判断された場合は、予防的殺処分やワクチン接種が実施される。
8. 発生情報
9. 参考情報
- 口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針
- 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
- 各国の口蹄疫情報
- 口蹄疫ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤はウイルス増殖を抑制する:平成18年度 動物衛生研究成果情報
編集 : 動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)