動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

水疱性口内炎 (vesicular stomatitis)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 :牛、水牛、鹿、馬、豚、いのしし

1. 原因

原因はRNAウイルスのラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、ベシクロウイルス属(Vesiculovirus)の水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus)である。砲弾型のウイルス粒子に一本鎖(-)RNAのウイルスゲノムを含有している。原因となる主要な血清型はVesicular stomatitis New Jersey virus とVesicular stomatitis Indiana virusの2つである。

2. 疫学

近年、発生はアメリカ大陸のみに限られる。2004~2006年、2009~2010年、 2012年、2014年および2019~2020年にかけてアメリカ合衆国で牛および馬でのVesicular stomatitis New Jersey virusの流行が報告されている。ウイルスは吸血昆虫(ダニ、サシバエ、蚊、ブヨ等)によって伝播されるため、発生に季節性がみられる。発生時には感染動物や汚染物との接触でも伝播する。

3. 臨床症状

馬、ロバ、牛、豚、水牛などに感染する。緬山羊は臨床症状を示しにくい。潜伏期は2~4日で、発熱の後、泡沫性の流涎や蹄・鼻、口腔内の水疱形成が見られる。2次的に食欲不振や跛行を示す。ヒトが感染した場合、インフルエンザ様の症状を示すことがある。

4. 病理学的変化

蹄、口腔内粘膜や舌に水疱、びらん、潰瘍が認められる。二次感染がなければ、1週間程度で治癒する。

5. 病原学的検査

病原学的検査には水疱液、水疱上皮等を用いる。
  • ウイルス分離 : 培養細胞や発育鶏卵を用いる。
  • 抗原検出ELISA
  • RT-PCR

6. 抗体検査

ELISA、中和試験、および補体結合反応がある。

7. 予防・治療

治療は行わない。摘発・淘汰により、感染拡大を防止する。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、馬の感染症第3版(JRA総研)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)

写真1 : 左・蹄冠部からの滲出益の漏出、右・舌の潰瘍(原図 : JRA総研栃木支所)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)