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対象家畜 :豚、いのしし
1. 原因
原因はRNA型ウイルスのフラビウイルス科ペスチウイルス属のペスチウイルスC(CSFウイルス)で、ゲノムは約12.3 kbの線状一本鎖(+)RNAである。抗原的には単一で血清型はないが、遺伝子型では少なくとも3型に分類されている。病原性の違いによってウイルスは高病原性株、低病原性株、生ワクチン株に分けられる。
2. 疫学
豚及びイノシシが感受性動物で、年齢や性別に関係なくすべての発育段階において発症する。感染は罹患動物との直接接触の他、鼻汁や排泄物の飛沫・付着物との間接接触により起こる。侵入すると瞬く間に畜舎内に拡がる。わが国では本病の清浄化に成功したが、2018年9月に26年振りとなる発生があり、現在も継続している。
3. 臨床症状
高病原性株の感染では100%の死亡率で、典型的な臨床症状はなく、発熱、食欲不振、うずくまりといった一般的な症状で始まる。さらに結膜炎、リンパ節腫脹、呼吸障害、便秘に次ぐ下痢がみられ、後躯麻痺や運動失調、四肢の激しい痙縮等神経症状が現れる。最終的には起立困難となり、急性経過の場合には1日以内に死亡する。慢性経過の場合にはこうした症状を繰り返し半数が1ヶ月以内に死亡するとされる。
4. 病理学的変化
臨床症状を呈して経過が長い場合には臓器の充出血が目立つ。特に膀胱粘膜の点状出血、リンパ節の髄様出血、腎皮質の点状出血がみられる。
5. 病原学的検査
扁桃の凍結切片を作製し、市販診断用蛍光抗体を用いて抗原を検出する。ウイルス分離は扁桃、脾臓、リンパ節等の乳剤の他、血清を含め血液を使用して豚培養細胞に接種する。増殖しても細胞変性効果を示さないためにその確認と同定のために市販診断用蛍光抗体を用いる。ウイルス遺伝子の5'非翻訳領域のRT-PCRは検出効率が高いが、BVDウイルス等も検出される上コンタミの可能性があるため、実施に当たっては注意が必要である。
6. 抗体検査
市販ELISAと中和試験が利用可能である。ELISAは中和試験のように生ウイルスを扱わず、数時間で判定可能であるものの、BVDウイルス抗体も検出することから注意が必要である。抗体識別のためにはCSFウイルスとBVDウイルスの比較中和試験を行う。中和試験は増殖に細胞変性効果を伴わないことから通常判定時に酵素染色を行うが、生ワクチンであるGPE-株についてはCPK-NS細胞を用いることにより細胞変性効果による判定も可能である。
7. 予防・治療
防疫措置に関してはCSFに関する特定家畜伝染病防疫指針及びそれに係る留意事項に従い実施することとされている。
8. 発生情報
9. 参考情報
- 「豚熱に関する特定家畜伝染病防疫指針」(令和2年7月1日農林水産大臣公表。令6年3月28日一部変更。)
- 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
- わが国における豚コレラの清浄化 : 畜産技術、第627号、30-33 (2007)
- CSF(豚熱)解説

写真1 : 扁桃の陰窩上皮細胞の特異的な緑色蛍光
編集 : 動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)