動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

悪性カタル熱 (malignant catarrhal fever, MCF)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : 牛、水牛、鹿、めん羊

1. 原因

オルトヘルペスウイルス科(Orthoherpesviridae)、ガンマヘルペスウイルス亜科(Gammaherpesvirinae)、マカウイルス属(Macavirus)に分類される、複数のウイルス。主な原因ウイルスは、めん羊を自然宿主とするMacavirus ovinegamma2 (旧称:Ovine gammaherpesvirus 2, OvHV-2)とウシカモシカを自然宿主とするMacavirus alcelaphinegamma1(旧称:Alcelapine gammaherpesvirus 1, AlHV-1)で、それぞれヒツジ随伴型(SA-MCF)とウシカモシカ媒介型(WA-MCF)に区別される。

2. 疫学

自然宿主から感受性宿主(牛や水牛、鹿など)へと動物種を越えて感染する疾病で、自然宿主は終生ウイルスを保持する。感受性宿主は、感染性ウイルスを排泄する出生直後の自然宿主やその胎盤と接触することで感染する。発生国によっては他の経路やブタでの発生も報告されている。 SA-MCFは日本を含め、世界的に発生が認められ、WA-MCFはアフリカ中心に発生が認められる。

3. 臨床症状

WA-MCFもSA-MCFも自然宿主は不顕性感染。感受性宿主における症状は潜伏期の長さによって様々で、高熱、角結膜炎、鼻鏡、口腔や陰部粘膜のびらん・潰瘍、リンパ節の腫脹や神経症状がみられる。発症後にはほとんどが死亡する。口蹄疫等の症状と類似する。

4. 病理学的変化

病変は全身性であり、主要な病変は大小単核細胞の浸潤による粘膜上皮の壊死性炎、同様細胞による血管炎、リンパ組織でのリンパ球増生である。

5. 病原学的検査

SA-MCFのウイルス分離は困難であるが、PCRで発症動物からウイルスDNAが検出される。WA-MCFは病変部やリンパ系組織からウイルスが分離される。

6. 抗体検査

OvHV-2に対する直接的な抗体検査法はないが、共通抗原性を有するAlHV-1に対する競合ELISAや補体結合反応で行われている。

7. 予防・治療

SA-MCFについては、周産期のヒツジと感受性動物との接触をさける。一方、感受性動物から感受性動物への感染は稀である。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)