動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

チュウザン病 (Chuzan disease)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 :牛、水牛、山羊

1. 原因

レオウイルス目(Reovirales)、セドレオウイルス科(Sedoreoviridae)、オルビウイルス属(Orbivirus)、Orbivirus palyamense、チュウザンウイルス(Chuzan virus)。10分節からなる2本鎖RNAをゲノムに持つ。血清学的にインドで分離されたカスバウイルス(Kasba virus)と同一である。

2. 疫学

ウイルスは吸血昆虫(主に体長1~3mmほどのCulicoides属ヌカカ)によって媒介され、牛、水牛、山羊に伝播する。ウイルスの伝播はベクターの活動が盛んな夏から秋に起きる。妊娠牛が感染した場合、秋から翌年の春にかけて流行性異常産が発生する。和牛で多発し、乳用牛での発生は少ない。

3. 臨床症状

異常子牛の出産を主徴とし、流産や死産、早産は少ない。感染母牛には異常はみられない。異常子牛にみられる症状は、虚弱、自力哺乳不能および起立不能などの運動障害、間欠的なてんかん様発作、後弓反張等の神経症状である。眼球の混濁や盲目等がみられることもある。関節彎曲等の体形異常は認められない。パリアムウイルス種の血清型のひとつであるディアギュラウイルス(D'Aguilar virus)の関与が疑われる異常産でも、同様の症状がみられる。

4. 病理学的変化

異常子牛の病変は中枢神経系に限られ、大脳欠損(水無脳症)および小脳形成不全が認められる。病理組織学的な観察では、大脳の残余部において神経細胞の疎性化や細胞浸潤、石灰沈着が、小脳においては髄質や顆粒層の菲薄化、プリンキエ細胞の減数が観察される。

5. 病原学的検査

異常子牛では在胎期間中にウイルスが消失しているため、ウイルスは分離されない。同様に、免疫組織学的手法による抗原の検出は困難である。

6. 抗体検査

中和試験等。初乳未摂取の異常子牛の場合、血清中の抗体を検出することで診断可能。ディアギュラウイルスとは、血清学的交差性があることに留意する。

7. 予防・治療

不活化ワクチンの接種(ベクターであるヌカカの活動が盛んになる初夏前に完了)で予防。治療法はない。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)、牛病学第3版(近代出版)

写真1 : 野外例 : 後弓反張を示した仔牛(原図 : 元動物衛生研究所、後藤義之氏)

写真2 : 脳の異常形成・正常に近いもの(左)、全大脳、小脳の欠損(右)(原図 : 元動物衛生研究所、後藤義之)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)