- 牛
- 鹿
- 馬
- めん羊・山羊
- 豚
- 鶏
- その他・家きん
- 蜜蜂
- その他・家畜
対象家畜 : 牛、水牛
1. 原因
ランピースキン病の病原体は、羊痘・山羊痘に類似したポックスウイルス科カプリポックス属に分類される。特に、Neethling ウイルスがよく知られる。羊や山羊には病原性がないといわれる。5~7日目の発育鶏卵の漿尿膜上にポックを形成して、発育鶏卵でよく増殖する。BHKやVero細胞などの培養細胞などにも細胞質内封入体が観察される。
2. 疫学
アフリカおよびマダガスカル島で主に発生していたが、近年クエート、イスラエル、イエメンなどの中近東の国々に波及し、2015年にはトルコを経由し、東南ヨーロッパに拡大した。その後、本病はインドや中国へと発生が広がり、2019年中国大陸の一部で発生して以来、沿海地域に拡大しており、2020年7月に台湾の金門島(金門県)で感染牛が確認された。蚊やハエなどを介して中国大陸に近い金門に伝わった可能性が指摘されている。
3. 臨床症状
潜伏期間は2週間以下であるが、5週間と潜伏期間の長い場合もあるという。食欲不振、発熱のほか、全身、特に頚部、背側、脚部、外陰部などに数個~数百個の結節が観察される。その他、泌乳量の減少や浮腫などが認められる。
4. 病理学的変化
初期には、発熱、食欲不振、鼻漏、流涎が認められ、発熱後48時間以内に多数の結節・発疹が体表や呼吸器、消化器、生殖器の粘膜に現れる。結節の大きさは0.5~5cm。結節部が2次感染により壊死し、潰瘍となり、滲出液が固まり痂皮を形成する。軽度の病変は2~3週間で治癒するが、回復までに3ヶ月以上かかる場合があり、回復後も痕跡が残る。肉眼的にはリンパ節炎とリンパ液の貯留による浮腫が乳房や胸部、腹部、四肢に認められ、ときに患畜が跛行する。
5. 病原学的検査
病変部組織乳剤の感受性細胞および発育鶏卵への接種によるウイルス分離、病変組織の好酸性細胞質内封入体の確認、電子顕微鏡によるポックスウイルスの存在。PCRによるウイルス遺伝子の検出。
6. 抗体検査
間接蛍光抗体法、中和試験。
7. 予防・治療
汚染国においては、培養細胞継代および発育鶏卵で弱毒した生ワクチンによる防圧が有効である。清浄国においては、発生国からの家畜の輸入禁止と検疫所における摘発が必要である。万一国内での発生が認められた場合には早期の摘発淘汰が必要である。
有効な治療法はない。
8. 発生情報
9. 参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集 : 動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)