- 牛
- 鹿
- 馬
- めん羊・山羊
- 豚
- 鶏
- その他・家きん
- 蜜蜂
- その他・家畜
対象家畜 : 牛、水牛
1. 原因
レオウイルス目(Reovirales)、セドレオウイルス科(Sedoreoviridae)、オルビウイルス属(Orbivirus)、Orbivirus ruminantiumに分類される流行性出血病ウイルス(epizootic hemorrhagic disease virus:EHDV)の血清型2の株のひとつであるイバラキウイルス(Ibaraki virus)。10分節からなる2本鎖RNAをゲノムに持つ。血清学的にEHDV血清型2に含まれる。1997年に発生したイバラキ病と死流産は、当初本ウイルスの変異株が原因とされていたが、現在ではEHDV血清型7に属する新しい株によるものであったことが判明している。また、2015年にはEHDV血清型6によるイバラキ病様の疾病の発生が報告されている。
2. 疫学
ウイルスは吸血昆虫(主に体長1~3mmほどのヌカカ)によって媒介され、牛、水牛に伝播する。ウイルスの流行には季節性(夏~秋)がある。発生地域は関東地方以南に限られている。牛から牛への接触感染はない。
3. 臨床症状
ブルータングに類似する。軽度の発熱とともに、食欲不振、流涙、結膜充血・浮腫、泡沫性流涎、鼻腔・口腔粘膜の充血・鬱血・潰瘍、蹄冠部の腫脹・潰瘍、跛行等がみられる。その後、発症牛の約5%に食道麻痺・咽喉頭麻痺・舌麻痺による嚥下障害が発生する。1997年にはEHDV血清型7の株の感染により、これらイバラキ病の典型的症状に加えて死流産もみられている。
4. 病理学的変化
上部消化管(舌から胃にかけて)の出血や水腫が著明である。嚥下障害の場合、食道の漿膜から筋層にかけて充・出血、浮腫がみられる。また、食道、咽喉頭および舌の横紋筋に硝子様変性がみられる。EHDV血清型7の感染例では死流産胎子に病理学的変化は認められない。
5. 病原学的検査
発病初期または発熱時の血液を材料とし、ウイルス分離を行う。ヘパリン加血液を血球・血漿に分け、血球をリン酸緩衝液で3回洗浄して凍結融解後、培養細胞に接種する。RT-PCR法やリアルタイムPCRによるウイルス遺伝子の検出も診断法として有用。死流産の場合は胎子血液や臓器乳剤を材料として同様の検査を行う。
6. 抗体検査
中和試験
7. 予防・治療
生ワクチンあるいは不活化ワクチンの接種(媒介昆虫の吸血が盛んになる初夏前に完了する)により予防。EHDVの他の血清型に対する効果は不明である。嚥下障害発症牛に対しては、補液および誤嚥性肺炎の防止のための対症療法を行う。
8. 発生情報
9. 参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)