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- 鹿
- 馬
- めん羊・山羊
- 豚
- 鶏
- その他・家きん
- 蜜蜂
- その他・家畜
対象家畜 : 牛、水牛
1. 原因
モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、アルファラブドウイルス亜科(Alpharhabdovirinae)、エフェメロウイルス属(Ephemerovirus)、Ephemerovirus febrisに分類される牛流行熱ウイルス(bovine ephemeral fever virus)。ゲノムは1本鎖(-)RNAであり、ウイルス粒子は長さ90~180nm、直径約80nmの弾丸型の形状をもち、エンベロープを有する。
2. 疫学
日本、台湾、中国、韓国、インドネシア、オーストラリア、中東、アフリカ諸国の熱帯~温帯にかけて牛や水牛に発生がみられる。ウイルスは蚊やヌカカによって媒介されるため、発生には季節性がある。我が国では1949~1951年に大規模な流行があり、その後も主に西日本において周期的な流行を繰り返してきた。しかし、近年では流行が限局的であり、頻度も少ない。沖縄県八重山諸島では、数年おきに発生が報告されている。九州以北では、1988年以降、長らく本病の発生がなかったが、2015年に鹿児島県で小規模の発生があった。発症率は一定でなく、数%~100%と幅がある。死亡率は1%以下である。
3. 臨床症状
発症牛では突発的な発熱(41~42°C)がみられるが、その後1~2日程度で回復することが多い。また、元気消失、食欲低下、呼吸促拍、流涙、流涎、四肢の関節痛や浮腫による歩行困難、起立不能、筋肉の振戦、反芻停止、乳量低下ないし泌乳停止などの症状を呈するが、解熱に伴って回復することが多い。
4. 病理学的変化
肺における間質性気腫、充血、水腫がみられることがあり、重症例では肺全体が膨張し、伸縮不能となって死亡することがある。また、上部気道粘膜(鼻腔、咽喉頭、気管)の充出血、関節の滑膜炎、リンパ節炎などが知られている。
5. 病原学的検査
ウイルスの分離材料として、発症牛や同居牛の血液を使用する。分離材料を培養細胞(HmLu-1、BHK-21、Vero)あるいは乳のみマウス脳内への接種し、中和試験や蛍光抗体法によってウイルスの同定を行う。RT-PCR法やリアルタイムPCRによるウイルス遺伝子の検出も診断法として有用。
6. 抗体検査
中和試験により血清学的診断を行う。
7. 予防・治療
不活化ワクチンによる予防を行う。流行が始まる前に免疫が付与されるよう、ワクチン接種を完了させておく。治療は対症療法のみ。
8. 発生情報
9. 参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)