動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

トリコモナス症 (trichomonosis)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : 牛、水牛

1. 原因

本病の原因は、トリトリコモナス・フィータス(Tritrichomonas foetus)と呼ばれる原虫。大きさは10~25 x 3~15µmで、3本の前鞭毛と1本の後鞭毛を有する。後鞭毛は起点から前半部が細胞質との間に波動膜を形成し、後半部が遊離部分となる。鞭毛と波動膜の運動によって遊泳する。

2. 疫学

牛の生殖器感染症で、感染雄牛との交尾や感染精液の人工授精により感染する。わが国では1963年以降、発生していない。

3. 臨床症状

雌牛では腟粘液の異常(膿様物および粘液の増加)、陰唇の腫脹を示し、妊娠早期(2~4か月)の流産、子宮内膜炎などによる不妊症がみられる。雄牛では包皮腔が主な感染部位となるが、多くは無症状である。

4. 病理学的変化

雌牛では腟炎、子宮内膜炎を示す。雄牛ではまれに包皮炎がみられる。

5. 病原学的検査

腟や子宮の粘液、滲出液、包皮腔の洗浄液、精液を直接鏡検して運動性の原虫を確認する。また、これらの材料や流産胎子の第四胃内容物を、牛血清加ぶどう糖ブイヨン培地を用いて37°C・7日間培養し、原虫を分離する。

6. 予防・治療

治療には、包皮腔や子宮の洗浄やルゴールグリセリン液の注入が行われる。予防には、感染牛の国内持ち込みを監視するとともに、感染雄牛の淘汰や、種付け、人工授精の衛生管理を徹底する。

7. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

8. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第3版(近代出版)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)