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対象家畜 : 蜜蜂
1. 原因
ダニ目、中気門目、ヘギイタダニ科のミツバチヘギイタダニ(Varroa destructor)で、大きさは1.15× 1.75mm、横長楕円形の大型でカニに似たへぎ板状の構造をしており、ハチへの寄生は肉眼で確認できる。
2. 疫学
ミツバチヘギイタダニは、セイヨウミツバチに対して大きな被害をもたらす。わが国では1958年にミツバチ加害ダニとして報告され、1982年の奇形蜂の大発生を契機に本ダニの催奇形性などが明らかにされた。なお、我が国に分布するとされていたVarroa jacobsoniはトウヨウミツバチに限定して寄生する種であり、日本を含む世界各地のセイヨウミツバチの加害種はV.destructorである。
春から夏にかけての巣内に雄蜂がいる時期は、ミツバチヘギイタダニは雄蜂の蜂児に好んで寄生し、繁殖する。秋になって雄蜂の生産が止まると雄蜂に寄生して増えたダニが一斉に働き蜂の蜂児に寄生するため、吸血の影響による成虫の体重減少や労働能力の減衰などが見られるようになる。そのため、秋に蜂群レベルで大きな被害が出やすい。
3. 臨床症状
蜂児に寄生し、体液を吸うため発育障害を引き起こし、1蜂児に対して5匹以上の寄生があると羽化した成蜂に腹部の萎縮、翅の奇形、脚の変形等の出現率が増す。ダニが主に寄生するのは蜂児であり、産卵、増殖の場も育児巣房内である。蜂児のいない越冬期は成蜂に寄生して越冬する。ダニの伝播は寄生蜂の直接移動および蜂・蜂の直接接触によるため、蜂群間では蜂の迷い込みや盗蜂が、地域や国間では蜂群の移動(輸出入)が伝播、まん延の要因と指摘されている。
4. 病原学的検査
成蜂からのダニ検出。好発生部位は腹部腹板間。
5. 予防・治療法
ミツバチヘギイタダニの駆除剤としては、ピレスロイド系殺虫剤フルバリネート製剤であるアピスタン、有機窒素系殺ダニ剤アミトラズ製剤であるアピバール、チモールを主成分とするチモバールが販売されている。また、雄蜂の蜂児を好む性質を利用して、春に巣箱内に雄蜂巣房で構成された巣板を挿入し、ダニを雄蜂の蜂児に誘引して寄生させた後(蓋掛け後に)、この巣板を除去することによって巣箱内のダニの数を減らす生物学的防除法も行われている。
6. 発生情報
7. 参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、病性鑑定マニュアル第3版(全国家畜衛生職員会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)、動物衛生学(文永堂出版)
編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)