動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

あひるウイルス性肝炎 (duck virus hepatitis)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : あひる

1. 原因

ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、アビヘパトウイルス属(Avihepatovirus)に属する1型(あひるA型肝炎ウイルス)、アストロウイルス科(Astroviridae)に属する2型および3型に分類される。いずれもゲノムは一本鎖RNAでエンベロープを持たない小型球状ウイルス。

2. 疫学

1型はあひるを飼育している国で広く発生する。2型はイギリス、3型はアメリカ合衆国で確認されている。日本では2015年に52年ぶりに1型の発生が報告された。4週齢未満のヒナのみが発症する。主に接触・経口感染で伝播する。

3. 臨床症状

潜伏期は1~2日で感染後は甚急性経過を取り、3~4日で死亡する場合が多い。症状としては、感染鳥は目を閉じ、うずくまったり、横たわり、痙攣のようにキックし、反り返り死亡する。致死率は1型の場合、1週齢未満で95%、1~3週齢で50%程度であり、4~5週齢では低くなる。2型では、ヒナの日齢により10~50%であるが、発症すればたいてい死亡する。3型では、30%以下である。

4. 病理学的変化

肉眼的には、肝臓腫大または斑状出血が観察される。組織学的には肝細胞の増殖、小葉間胆管上皮の増殖、出血、細胞浸潤など。

5. 病原学的検査

臨床・疫学検査と、肝臓乳剤や血液をアヒル卵に接種してウイルスを分離する。1型と2型は発育鶏卵でも分離できる。

6. 抗体検査

経過が甚急性のため有効ではない。

7. 予防・治療

ひなが感染することから孵化後の衛生管理が重要である。1型では弱毒生ワクチンや不活化ワクチンが、3型では弱毒生ワクチンがあるが、日本では認可されていない。2型にはワクチンはない。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)、Terrestrial Manual (WOAH)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)