動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

鳥マイコプラズマ症 (chicken mycoplasmosis)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : 鶏、七面鳥

1. 原因

Mycoplasma gallisepticum およびM. synoviae の2種のマイコプラズマが本疾病の原因菌である。

2. 疫学

冬季、幼弱期に発病しやすく、ニューカッスル病ウイルス、鶏伝染性気管支炎ウイルス、大腸菌等との混合感染によって重症化・慢性化する。不顕性感染も多い。

3. 臨床症状

菌株や混合感染によって大きく異なる。気管のガラガラ音、鼻汁、くしゃみ、食欲減退、レイヤーでは産卵低下、ブロイラーでは死亡率の増加、時に足関節炎によるは行を示す。七面鳥はM. gallisepticum に感受性が高く症状も重い。

4. 病理学的検査

肉眼病変は呼吸器粘膜の肥厚・粘液の増量、気嚢の混濁・肥厚・チーズ様滲出物、関節腫脹中のクリーム様・チーズ様滲出物。組織病変は呼吸器粘膜の単核球浸潤、粘液腺の過形成、リンパろ胞の過形成、関節滑膜の絨毛形成、滑膜下織の細胞浸潤。

5. 病原学的検査

確定診断は病変からの原因菌の分離同定による。綿棒材料をFreyの寒天平板および液体培地に接種し、寒天平板は37°CのCO2孵卵器で1週間培養する。通常は2~3日後から目玉焼き状集落が発育する。液体培地は2mlの10倍階段希釈を数管行いゴム栓をして37°Cの通常孵卵器で黄色のカラーチェンジを示すまで培養する。発育した液体培養はPCRで簡易同定し、最終同定は免疫血清を使用し、間接酵素抗体法による集落染色、古典的な代謝阻止試験等で行う。

6. 抗体検査

国内ではM. gallisepticum およびM. synoviae の急速平板凝集反応用診断液が市販され、主としてIgM抗体を検出する。ウイルス病に対するワクチン接種後などに非特異反応が出現することがあるが、多くは反応系に馬血清1滴を加えることで陰転する。非特異反応の識別にはイムノブロッティングも有用。海外ではELISAキットも市販される。

7. 予防・治療

種鶏の清浄化、コマーシャル鶏は清浄鶏の導入、感染鶏群からの隔離飼育、混合感染する病原体に対するワクチン接種、抗マイコプラズマ薬(フルオロキノロン系抗菌剤)の投与。M. gallisepticum では不活化ワクチンおよび生菌ワクチンが市販される。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

写真1 : M. gallisepticum の目玉焼き状集落(原図 : 動物衛生研究所、今田由美子氏)

写真2 : M. synoviae の目玉焼き状集落(原図 : 動物衛生研究所、今田由美子氏)

写真3 : M. gallisepticum の液体培地での発育。グルコースの分解による黄変(原図 : 動物衛生研究所、今田由美子氏)

写真4 : M. gallisepticum のPCRによる検出。1-8: M. gallisepticum 8株、9-20: M. synoviae およびその他の鳥類由来マイコプラズマ9菌種 (原図 : 動物衛生研究所、今田由美子氏)

写真5 : M. gallisepticum の血清平板凝集反応。左から感染2、3、4週後の血清および陰性血清。(原図 : 動物衛生研究所、今田由美子氏)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)