動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

伝染性ファブリキウス嚢病 (infectious bursal disease)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : 鶏

1. 原因

伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)は、ビルナウイルス科(Birnaviridae)、アビビルナウイルス属(avibirnavirus)に属する。ゲノムは二本鎖RNAで、2本の分節からなる。外被をもたない正二十面体で、約60nmの粒子。血清型1型と2型に分かれ、病原性株は1型に属する。1型は、従来型、強毒型および抗原変異型に分かれる。

2. 疫学

10週齢までの若齢期に多い。ワクチンが未接種の鶏群、移行抗体によってワクチンがテイクされなかった鶏群で発生する。死亡ピークは1峰性で、回復は早いが、混合感染により死亡率は増加する。

3. 臨床症状

1990年頃に日本に持ち込まれた強毒型株では、感染翌日から元気消失、2~5日目には羽毛逆立て、下痢、沈鬱、死亡がみられ、致死率は100%に達することもある。以前から日本にある従来型株では軽い下痢と元気消失後に回復する。不顕性感染も多い。

4. 病理学的変化

ファブリキウス嚢は水腫性に腫大し、漿膜面にゼリー様物が付着し、粘膜面は壊死し、時に出血とチーズ様物の混入がみられる。ファブリキウス嚢(F嚢)の水腫、リンパ濾胞の消失、B細胞の壊死が顕著で、回復期にはマクロファージ、T細胞の浸潤と線維化がみられるが、F嚢の萎縮は回復しない。極期には骨髄細胞の消失がみられるが、直ちに回復する。

5. 病原学的検査

F嚢中のウイルス抗原は寒天ゲル内沈降反応、蛍光抗体法、免疫病理組織検査などで検出可能である。従来型、強毒型および抗原変異型の病原性株、並びにワクチン株の識別は、VP2遺伝子の塩基配列の比較から可能である。ウイルス分離はファブリキウス嚢乳剤の鶏胚漿尿膜上接種で行う。

6. 抗体検査

ワクチン未接種鶏あるいはワクチンがテイクされなかった鶏が発病。抗体検査方法としては、寒天ゲル内沈降反応、蛍光抗体法、中和試験、ELISAがある。

7. 予防・治療

オールイン・オールアウトと鶏舎の徹底的な消毒によって、ウイルスを鶏舎から除いてから雛を導入することが重要である。ワクチンは、移行抗体のレベルを見ながら、複数回投与し、抗体応答を確認する。強毒型株の汚染地域では、移行抗体に影響されにくい中等毒タイプのワクチンが有効である。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)