動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

鶏伝染性喉頭気管炎 (infectious laryngotracheitis)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : 鶏

1. 原因

鶏伝染性喉頭気管炎ウイルス(Infectious laryngotracheitis virus)はオルトヘルペスウイルス科(Orthoherpesviridae)、アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae)、イルトウイルス属(Iltovirus)に属する。ゲノムは二本鎖DNAで、エンベロープを持つ。血清型は単一である。臨床的に急性型、亜急性型、慢性型に分類される。

2. 疫学

日齢や鶏種に関係なく発生する。感染鶏群における死亡率は急性型では50%を超えることもあり、亜急性型では10~30%である。ウイルスは呼吸器から排泄され、経口または経鼻感染で伝播する。いったん発生すると常在化しやすい。全世界的に分布している。

3. 臨床症状

急性型では喉頭や気管などの上部呼吸器と結膜におけるカタル性、滲出性、出血性の炎症により、発咳、鼻汁濾出、喀痰(痰が鶏体やケージに付着することもある)などの激しい呼吸器症状を示す。特に血痰は本病の特徴であり、痰がつまることによる窒息死も起こる。亜急性型も同様の症状を示すが急性型より軽度である。

4. 病理学的変化

特徴的な肉眼所見として気管粘膜に著明な充血、出血水腫性肥厚、粘膜表面に偽膜様に付着した血様、黄白色クリーム様あるいはチーズ様滲出物が観察される。組織学的には病変部の粘膜上皮細胞の変性、核内封入体を伴う合胞体形成が観察される。

5. 病原学的検査

喉頭、気管および肺等を材料とし、発育鶏卵の漿尿膜上あるいは初代鶏腎培養細胞への接種によるウイルス分離検査を実施する。 PCR法によるウイルス遺伝子を検出する。

6. 抗体検査

ELISA、中和試験。

7. 予防・治療

一般的な衛生管理の徹底とワクチン接種を行う。発病鶏は回復してもウイルスが持続感染している可能性があり、鶏の移動は避けるべきである。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)、Terrestrial Manual (WOAH)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)