動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

馬伝染性子宮炎 (contagious equine metritis)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : 馬

1. 原因

馬伝染性子宮炎菌(Taylorella equigenitalis)。

2. 疫学

ウマ科動物が感染する。原因菌は生殖器に生息し、繁殖シーズン時、主に交尾により感染、伝播する。日本では2005年を最後に発生がなく、清浄化されている。

3. 臨床症状

全身症状は示さない。雌馬では子宮内膜炎、頸管炎による陰門部からの粘液の排出、早期発情の繰り返し、受胎率の低下、子宮および子宮頸管、膣粘膜の充血、浮腫がみられるが、不顕性感染も多い。雄馬は臨床症状を示さない。

4. 病理学的検査

肉眼的病変は子宮内膜にほぼ限局しており、粘膜の充血や水腫がみられ、子宮内に浸出液の貯留が認められる。病理組織学的には急性子宮内膜炎像を呈し、炎症性細胞浸潤が認められる。

5. 病原学的検査

子宮滲出液、子宮頸管・陰核窩・陰核洞・亀頭窩・包皮スワブなどを材料とし、ユーゴンチョコレート寒天培地で炭酸ガス培養し、細菌検査を実施する。PCR法による検査も行われる。

6. 抗体検査

疫学調査に補体結合反応、間接血球凝集反応、試験管内凝集反応などが利用されている。

7. 予防・治療

繁殖前の病原体検査により陽性馬を摘発し、交配に供しないことが最も重要である。治療は感受性のある抗生物質により可能であるが、陰核洞または陰核の切除も有効である。ワクチンはない。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、馬の感染症第4版(JRA総研)、馬の感染症第4版(中央畜産会)、馬の科学, 48(3), 226-239 (2011)

写真1 : 左・子宮から滲出液を排出する感染雌馬、右・滲出液のギムザ染色(原図 : JRA総研栃支所)

写真2 : チョコレート寒天上のコロニー

写真3 : 培養菌のグラム染色


編集 : 動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)