動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

仮性皮疽 (pseudofarcy in horses)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : 馬

1. 原因

温度依存性の二形性真菌であるHistoplasma capsulatum による感染症。H. capsulatum にはvar. capsulatum、var. duboisii およびvar. farcinosum の3亜種が知られており、家畜衛生分野で問題になるのは、主にvar. farcinosum である。

2. 疫学

地中海沿岸地方、アフリカ、アジア、ロシアなどに分布しており、ウマ科、ラクダ科動物への感染が知られている。病変部からの汚染膿汁や、汚染馬具に接触して蔓延伝播する。またハエ、アブなどの節足動物による機械的伝播も起こると考えられる。

3. 臨床症状

主要病変部位は四肢、頸部で、皮下のリンパ管が腫大し、痛みを伴わない念珠状膿瘍を形成する。進行すると病変部に潰瘍をつくり、鼻粘膜等にも波及する。二次的に肺炎や結膜炎を引き起こすこともあるが、筋肉、骨への感染像はないとされる。

4. 病原学的検査

病巣部滲出液、膿汁、痂皮などの塗抹標本の鏡検による酵母用真菌の確認、および分離培養により診断する。しかし、本真菌はBSL3に区分されるため取り扱いには注意が必要である。培地上での発育は遅く分離培養は困難であることから、近年は分子生物学的手法による診断が試みられている。

5. 抗体検査

実用的な検査法はない。

6. 予防・治療

病巣部の切開・排膿と消毒が行われる。予防のためには感染馬の隔離、媒介節足動物の駆除、馬に接触する器材の消毒などが行われる。

7. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

8. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第3版(近代出版)、人獣共通感染症初版(医薬ジャーナル社)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)