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対象家畜 : めん羊
1. 原因
レトロウイルス科 (Retroviridae)、オルトレトロウイルス亜科レンチウイルス属 (Lentivirus)のLentivirus ovivismae (マエディ・ビスナウイルス)。山羊のLentivirus capartenc (山羊関節炎・脳炎ウイルス)と近縁で、両種を「Small ruminant lentivirus, SRLV」と総称する。逆転写酵素を有し、自らのゲノムRNAを宿主細胞質内で逆転写し、合成されたウイルスDNA(プロウイルス)を宿主細胞のDNAへ組み込み持続感染する。
2. 疫学
呼吸器飛沫による水平伝播が主と考えられているが、初乳・常乳を介した伝播も起こる。オーストラリア、ニュージーランドは清浄国であるが、両国以外の主なめん羊の生産国で本病の発生が報告されている。日本では、2012年7月に発生が認められた。
3. 臨床症状
多くのめん羊は臨床症状呈さす、持続感染状態を維持する。発症するのは主に成獣であるが、発症率は30%以下である。主な症状は進行性の肺炎による呼吸器症状で、発咳、元気消失などに始まり、数ヶ月間かけてゆっくり進行したのち、呼吸困難で死に至る。また、乳腺上皮細胞もマエディ・ビスナウイルスの標的細胞となるため、乳房炎も認められる。まれに脳脊髄炎をおこし、発症した場合には後肢の跛行から始まり、最終的には起立不能となる。
4. 病理学的変化
肺炎を起こした個体では、組織病変としてリンパ球、単球やマクロファージのび漫性浸潤、肺胞中隔の肥厚に特徴づけられる間質性肺炎が観察される。脳脊髄炎を起こした個体では脳脊髄における囲管性細胞浸潤やミクログリアの増生が認められ、症状が進行した個体では脳白質の脱髄が観察されることもある。
5. 病原学的検査
ウイルス分離は、感染個体の白血球を羊脈絡叢細胞と共培養することで可能である。しかし、ウイルス分離は非常に効率が悪いため、一般的には血清学的検査(寒天ゲル内沈降試験、ELISA等)を用いて診断する。補助診断法としてPCRによるウイルス遺伝子検出も用いられる。
6. 抗体検査
現在各国で確立されているのは寒天ゲル内沈降試験、ELISA法、CF法である。日本では寒天ゲル内沈降試験による検査が可能である。
7. 予防・治療
予防法および治療法はなく、摘発淘汰を基本とする。
8. 発生情報
9. 参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)